生活安全特別捜査隊・山口あゆみ巡査部長は、警察官として初めて被災地に足を踏み入れた。報道で目にしていた様子と異なる風景が広がり、「こんなに悲惨だったとは」と、ただ驚くしかなかった。避難所での被災者との会話で忘れられないのは、悲しい現実と向き合いながらも「今、生きていることだけで幸せです」という言葉。『寄り添って』初めて聞くことができた。
人身安全課・四間彩乃(しけん・あやの)巡査長は、避難所で話しかけた高齢の女性の、「久々に笑うことができた。ありがとう」。この言葉が忘れられない。
「寒いですね」。ごくありきたりのやり取りのつもりだった。話のきっかけが欲しかった。
寒い1月は兵庫出身の警察官にとって特別な季節。1月17日は石川県で迎えた。そのあとに続いた「あの時、神戸の皆さんも大変だったね」との言葉に、阪神・淡路大震災を思い出し、涙があふれた。そして「こんなに大変なのに、思いやりがあって…」。『寄り添って』、とても温かい気持ちになったという。
少年課・志茂千愛(しも・ちさと)巡査長は、「倒壊家屋を見るよりも、その家屋に住んでいた方々の“家”に対する思い入れや、どんな気持ちで避難所にたどりついたのか」という気持ちを考えると。いたたまれなくなった。先が見えない生活がどういうものか計り知れない。救援物資として渡したティッシュペーパーを受け取った高齢の女性は「一生のお守りに大事に持っておくから」と話したという。
「人命救助とは異なり、被災者への『寄り添い』は、結果が見えにくい」と思っていた志茂さんは、「こうして話を聞いてもらえるだけで嬉しい」と声を掛けられ、自分の任務の意味を改めて自覚したという。
生活安全企画課・富岡泰子巡査は、避難所で40代の母親と10代後半の娘に会った。娘は能登空港近くの航空学校に通っていたが、学校が被災したため、北海道の学校に転校することが決まり、母親がとても悲しむ顔を見て、「こうした形で離ればなれになるのか」と思ったという。
『寄り添って』、被災者がさまざまな事情を抱えていることを知り、とても不憫な気持ちになった。
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