今や広く社会問題となっている“人材不足”。その波は、インフラ業界にも押し寄せています。現場ではどのような課題を抱えているのでしょうか。メンテナンス・改修工事を手がける企業の経営者に、人材不足の原因や問題解決のための取り組みについてラジオ番組内で聞きました。
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「深刻な人手不足」と明かしたのは、株式会社マイスターエンジニアリング(本社:東京都千代田区)代表取締役社長の平野大介氏。同社は各種メンテナンスや改修工事を主業務の一つとし、病院や地下鉄、工場、遊園地、ホテルなどあらゆる施設にエンジニアを派遣しています。
平野氏が人材不足の原因の一つに挙げたのは『若手の教育体制』です。これまで主流だった、上司や先輩の背中を見て学ぶ形では「人が定着しない」と平野氏は明言しました。そこで同社では新人の育成を体系化。一つひとつの作業を言語化し、OJT(オンザジョブトレーニング=実地研修)プログラムと組み合わせることで、未学習・未経験からでも段階を踏みながら成長できるよう体制を整えました。
現場のエンジニアも「皆さん(背中を見て学べという)考えからアップデートして、手取り足取り指導してくれている」(平野氏)といいます。平野氏は、その背景に「仕組みの変化に戸惑っている場合ではない、技を継承していかないと、という意識」があるとし、意識改革や適格な人材育成の必要性を語りました。
さらなる原因として挙げられたのが、『業界の知名度の低さ』と、給与より休日の日数を重視するといった『昨今の若者の価値観』です。その中で、業界の実態と周囲のイメージにギャップが存在すると平野氏は指摘しました。
とくに前者については、若者へのアンケートでは「そもそもそんな業界があることを知らなかった」「厳しそう」「難しそう」といった後ろ向きな意見が多かった一方、技術者の回答の4分の3は「仕事に満足している」との答えだったとのこと。平野氏は「社会を支えるやりがいも感じており、ただ辛いだけということはありません。“どこへ行っても必要とされる仕事”というイメージに変えていきたいですね」と、問題解決にマイナスイメージの払拭が欠かせないとの考えを示しました。
加えて、新卒高校生は現在引く手あまたといいます。平野氏が明かしたのが、これまで技術者として想定されていた機電系をはじめとする男子理系学生のみではメンテナンス体制を維持できないとの予測。教育体制の整備を背景に「理系・文系問わず声をかけているのが現状」と平野氏は話します。
平野氏は「社会的に必要とされていて、分野によっては報酬も良く、手に職がつくためどの企業・地域に行っても食べていける仕事」と需要の高さを改めて伝えたうえで、「AIに取って代わられる仕事ではありません。現場で機械がちゃんと動いているか見て掃除をする作業は、人でないとできません。また、相互に連携を取り、並行して短時間で作業を進めることが多いため、機械化は難しいと言えます。価値の高い仕事です」と語りました。
平野氏の話を受けて、番組パーソナリティで自身も会社経営者である香山達也氏が官民連携の必要性を問うと、平野氏は取り組みを進めていきたいと応えました。また、同パーソナリティで大阪府議会議員の由井聖太氏は平野氏の話を受けて、「社会に必要な分野に人が行かないことが顕著になっている」と同意しました。
平野氏は「我々は、これからの日本になくてはならない仕事をしています。ぜひもっと知ってもらいたいし、興味があればぜひ応募していただきたい」と呼び掛けていました。
※ラジオ関西『放課後倶楽部』より