2021年11月、兵庫県稲美町の住宅が全焼し、小学生兄弟が死亡した放火殺人事件で、兄弟と同居していた伯父で、殺人と現住建造物放火罪に問われた男(53)の裁判員裁判で、神戸地裁姫路支部は15日、男に懲役30年(求刑・死刑)を言い渡した。
この判決を受けて、兄弟の両親(被告の妹夫婦)が会見し、「到底、納得できない。子どもたちに(判決内容を)報告できない」とつらい胸の内を明かした。
男は2021年11月19日深夜、妹夫婦らと同居していた兵庫県稲美町の木造2階建ての自宅で、押し入れに収納していた布団にガソリンをまいて火を放ち全焼させ、就寝中の兄(当時12歳・小学6年)と弟(同7歳・小学1年)を殺害したとされる。
被告人質問で男は「両親に精神的な苦痛を与えたくて、大切な子どもを狙った。直接的に殺したのは自分だが、間接的にやったのは妹夫婦らだ。謝罪はできない。死刑にしてもらってもかまわない」などと述べていた。
両親は「私たち夫婦の生きがい、何の落ち度もない2人の子どもを、放火という残虐な手段で殺害したにもかかわらず、30年という有期刑判決を受けたことに納得できない。検察には控訴してほしい旨を伝えた。(男から)心からの反省の言葉を聞きたかった。謝罪をしてほしかった」と述べた。
判決で神戸地裁姫路支部は、「(妹夫婦から)男への度重なる嫌がらせに対する逆恨みという親族間トラブルに起因し、相当追い込まれた精神状態にあった」、また「(男が)軽度の知的障がいがあったことも一定程度考慮した」として、死刑や無期懲役刑を回避し、有期懲役刑とした理由を述べた。
この点を踏まえ、遺族代理人・立花隆介弁護士は「率直に言うと、有期懲役は想定外だった。これまでの刑事裁判記録によると、1~3人が殺害された事件のうち、一審で死刑を求刑した案件については、求刑通りの死刑か無期懲役だった。審理は尽くされていたが、裁判員にとって、被害者遺族(妹夫婦)に問題があったような印象が強く出たようだ」と話した。
神戸地検姫路支部は「判決内容を精査し、上級庁とも協議して適切に対応したい」とコメントした。