『波よ聞いてくれ』(講談社「アフタヌーン」連載)という漫画をご存じでしょうか? 沙村広明原作の同漫画は2020年4月にアニメ化され、23年4月にはドラマ化もされました。札幌の架空のラジオ局を舞台に、スープカレー屋の店員がひょんなことから人気ラジオパーソナリティーとなって、さまざまな事件を解決する話です。
ところで皆さんは、この『波よ聞いてくれ』の「波」を実感されたことはありますか? そもそも、ラジオの「波」というのは電波のことを指します。例えば、神戸のラジオ局・ラジオ関西の電波(AM558kHz)は、淡路島にある送信所を通じて、1秒間に55万8千回の電気的な振動を伴って発信され、ラジオに届いています。それが電波という言葉に含まれる「波」の意味です。
また、それとは別の意味でラジオの「波」を感じることがあります。昔から中波で放送しているラジオ関西などのラジオ局には、ときどき、遠距離で受信するリスナーから「フェーディングがありました」という受信報告が送られてきます。
このフェーディングとは、受信するときに聞こえる音が、まるで海が波打つように、大きくなったり、小さくなったりすることを言います。この波は、中波よりも短波ラジオを聞いている皆さんの方が、なじみがあるかもしれません。その短波といえば、日本にはラジオNIKKEIという局があります。
このラジオNIKKEIの送信所は千葉県にあります。短波ラジオの放送電波は、地上数百キロ上空にある電離層という地球の大気の層ではね返ることにより、日本全国に届くのですが、この短波の電離層を使うという特性から、自然現象に左右されて時間や季節、受信する地点によって影響を受けて、波を打つように、音が大きくなったり、小さくなったりすることがあります。これがフェーディングであり、まさに波です。
フェーディングを体感するには、中波で放送されている番組を、短波で聞き比べてみるとわかりやすいでしょう。例えば、中波のラジオ関西で制作している番組の中には、短波のラジオNIKKEIでも放送されているものもありますので、ぜひ機会があれば短波ラジオで聞き比べてみてください。
短波ラジオは、電気店・家電量販店などで、安いものが2~3千円前後で販売されています。ぜひ、この機会に短波ラジオを使って「波を聞いて」みてはどうでしょうか。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』2024年2月27日放送回より
(文=須藤達也 / 会社員のかたわら、ラジオの受信技術や電子工作を中心に雑誌やブログにてテクニカルライターを担当)
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【放送音声】2024年2月27日放送回