「あなたにもチェルシーあげたい」という印象的なコピーでおなじみの飴菓子「チェルシー」。明治(本社:東京都中央区)は、今年3月末をもって販売の終了を予定しています。
1971(昭和46)年の発売から53年という国民的スイーツだけに、SNSでも惜しむ声が目立ちます。その味わいが、懐かしい思い出と結びついている人も多いのではないでしょうか。そこで今回改めてチェルシーに注目、歴史や素朴な疑問をひも解きます。
■「スカッチ」の意味
チェルシーは、発売の2年前から進められた一大プロジェクトだったといいます。当時、同社が“今までにない”を求めて着目したのが、英国北部スコットランド伝統の“スカッチキャンデー”でした。「スカッチ」とは、スコットランドでも洋酒のスコッチでもなく、高温で煮詰める工程=scorching(スコーチング)からきた言葉。当初は「バタースカッチ」「ヨーグルトスカッチ」の2種類でした。
■日本初の製法で〇〇がアップ
チェルシーは、練り合せた原料をそのまま型に流し込む製法で作られています。当時日本初導入だったその製法により、口当たりの滑らかさが向上。また、それまでは5~6%が限界だったというバターの含有量も2倍以上に増やせたことから、豊かな風味がさらに生きた味わいになりました。現在、バタースカッチにはコクのある発酵バターが使用されています。
■商品名は約3000通りの案から厳選
開発過程で苦労したことの一つがネーミングだったそうです。新しさを感じさせる、英国のイメージなど4つの基準をもとに、約3000通りの案の中から候補として残ったのが、「チェルシー」(ロンドン中心部の南西にある地区の名前)と「キングスロード」(チェルシー地区にある通りの名前)の2つ。最終的にユーザーへのテストを経て、愛らしい、しゃれた感じといった、商品コンセプトになじむ意見の多かった「チェルシー」に決まりました。
■黒い箱の誕生
チェルシーの象徴である黒色のパッケージは、斬新さ、“英国”や“高級”とのイメージ、店頭で目立つこと、テレビ映りの良さなどの6つの基準を満たすものとして生まれました。当時第一線で活躍していた3人のデザイナーにそれぞれ制作を依頼。その中で選ばれたのが、黒地に花柄でした。
「箱入り」なのも、袋入りの飴菓子が主流だった時代にやはり斬新さを打ち出そうとこだわった点でした。そこに、丸みを帯びた四角い粒のキャンデーが収まることとなりました。