「おじさんの必需品」「ケーキの上にのってるやつ?」なんて言葉とともに、アノ銀の粒々が再注目されていることをご存じでしょうか? その粒々とは、昭和のサラリーマンの必須アイテム「仁丹」です。
“元祖口臭ケア”ともいえる口中清涼剤で、現在も変わらず販売されているのですが、実はいま、とあるきっかけから再ブームが到来しているのだとか。仁丹の歴史や最新状況について、製造元である森下仁丹株式会社の商品担当・永田さんに話を聞きました。
―――そもそも仁丹とは?
【永田さん】 仁丹は、16種類の生薬を凝縮した「口中清涼剤」です。単に口がすっきりするだけでなく、二日酔いやめまい、乗り物酔いなどの症状にも効果がある医薬部外品です。
もともと、今から100年以上前の1905年に、予防医療のための庶民向けの薬として作られたのがはじまりです。当時は裕福な人しかちゃんとした治療を受けられないという世の中で、簡単な風邪や食あたりでたくさんの人が命を落としていました。そんな人たちを救いたい、という思いから生まれたのが仁丹です。
―――銀のコーティングはどのようにしてできた?
【永田さん】 開発当初の仁丹は、「赤大粒仁丹」という名称の赤い丸薬でした。その後、保存性や安全性をより高めるために、抗菌作用のある銀でコーティングした「銀粒仁丹」に改良されました。「銀粒仁丹」となったのは1929年で、実は、現在に至るまでの100年近い間、その姿を変えていません。
―――昭和の時代に入ると、サラリーマンの必須アイテムとして爆発的な人気となりました。どのような経緯があった?
【永田さん】 庶民の方々にもっと健康意識を持ってほしいという思いから、当時の医薬品業界では類を見ないほど「広告」に力を入れていたんです。新聞広告はもちろん、町中にのぼりや看板を設置したほか、薬局に対して「前払いにしてくれたら1割多く販売する」という、日本で初めての“特売方式”での販売を採用。発売2年目には、市販薬において日本一の売り上げとなりました。
発売当初は、「予防薬」として日常的に服薬していただくことが多かったのですが、昭和に入ってガムやミントタブレット系のお菓子が流行りはじめたのと同時に、「口がすっきりする」ということから口中清涼剤として使われることが増えました。
高度経済成長期のころが全盛期で、当時のサラリーマンはエチケットアイテムとしてタバコとセットで必ず持っていたようです。そのころには、フレーバーのついた「レモン仁丹」や「梅仁丹」、女性向けの「ローズ仁丹」など、さまざまなシリーズを開発。サラリーマン以外にも、多くの方に愛用いただいていました。
―――最近は若者からも注目されているとか?
【永田さん】 そうなんです。さまざまなタブレット菓子が台頭したことにより、一時は人気も下火に。しかし、ここ数年の間で人気芸人の方が話題に出してくれたり、国民的な漫画に登場した影響などもあり、若い方を中心に「仁丹ってなんだ?」とSNSなどで度々話題になるようになりました。
「いまこそ若い方々にも仁丹を知ってほしい!」という思いから、「まだまだ現役で売っているんですよ。」とX(旧:Twitter)で投稿したことをきっかけに、どんどん注目していただけるように。当初は3桁だったフォロワー数も、いまでは1.6万人を超えるまでになりました。
最近は、仁丹の味が気になって購入してくださる方や、「シルバーのケースがかわいい」と手に取ってくださる方など、令和の時代に「仁丹デビュー」してくれる方が増えてきています。