図鑑やポスター、標本、文献などに描かれたイラストや図を通して、生き物の特徴や魅力、絵で伝える利点、楽しさについて紹介する特別展「自然史のイラストレーション~描いて伝える・描いて楽しむ~」が大阪市立自然史博物館(大阪市東住吉区)で開かれている。5月26日(日)まで。
動植物や自然に関する多彩なイラスト・図を「博物図譜の時代」「記載と図鑑」「伝える・楽しむイラストレーション」の3章立てで展示している。第1章は江戸時代の園芸書、本草書に描かれた植物画からスタート。幕末、黒船を率いて来日したペリーの航海記に新種として記載された淡水魚イトウの図、細密な貝の絵が描かれた18~19世紀の貴重な本などのほか、大阪府東大阪市の椿の研究家、岸川慎一郎さん(1930~2020年)が収集した椿に関する文献も並ぶ。
近年の図鑑は写真を用いたものが多いが、かつては線画が主流だったという。第2章では植物学者、牧野富太郎(1862~1957年)の図鑑と関係が深い植物画家、山田壽雄(1882~1941年)による画や、菌類学者、本郷次雄(1923~2007年)が解説文と図版の両方を手掛けた「原色日本真菌類図鑑」掲載の原画を公開。
“イラストでしか表せないもの”も見どころだ。約5億~2億年前、海に生息していたと推測される謎の古生物「コノドント」の生態復元図や、大阪府富田林市で見つかった足跡化石などを基に作成した100万年前の富田林の風景画、地層データや化石を参考に作った10万年前の上町台地(大阪市)の復元画などが展示されている。
第3部は、主に同博物館の普及活動に関連した特集。2016年の特別展「氷河時代」のポスタービジュアルは、ナウマンゾウが山を背景に森の間を抜けて迫ってくる構図で、左側は針葉樹と落葉樹が混じった「氷期」、右側は照葉樹林の「間氷期」の森と山をそれぞれ描写、ナウマンゾウが大きな気候変動の中、生き抜いた歴史を一枚の絵で表している。
1955年以来ほぼ毎月発行されてきた同館友の会会誌「Nature Study」には、まるで図鑑のような精緻な線画がある一方、発送用封筒の裏面には博物館の日常を題材とした楽しいマンガを掲載。また、海の生き物を題材とした絵本のコーナーでは、描かれた海の生き物のイラストを同博物館の学芸員がチェックし、その特徴がはっきり分かる絵となるよう、校正している箇所が興味深い。