学問の神として知られる菅原道真を祀る北野天満宮(京都市上京区)で9日、平安貴族の歌遊びを再現した「曲水の宴」が開かれた。
曲水の宴は、北野天満宮の境内西側、紅梅殿の前に広がる「船出の庭」で詩歌を読む平安時代の宮中行事。
2016(平成28)年11月3日に約1000年あまりの時を経て再興され、今回で15回目を迎えた。以来、春と秋の年2回開かれている。
菅原道真は、高い文才を評価され、宇多天皇主催の曲水の宴に文人として幾度も招かれたとされる。
道真は日本古来の心と、国外から伝来した新しい文化を兼ね備える「和魂漢才」が必要だと説いたという。このため北野天満宮では和歌と漢詩を詠み(和漢朗詠)、道真の偉業を称える年中行事となった。
北野天満宮の和歌撰者・濱崎加奈子氏(有斐斎弘道館・館長)の解説のもと、小袿(こうちぎ)をまとった女性と狩衣(かりぎぬ)姿の男性が1組となり、計4組8人が「梅」や「酒」などを題材に和歌や漢詩を披露した。
和歌を詠むのは女性(歌人)、漢詩は男性(詩人)。
この日、京都の最高気温は6.9度と冷え込み、あられが降る中での開催だったが、参拝者約400人が平安貴族のみやびな文化を楽しんだ。
平安時代に始まった男装の演舞「白拍子(しらびょうし)」の奉納のあと、雅楽の調べに乗せて、童子らが酒を注いだ杯を載せた盃台を小川に流す。
盃台は羽觴(うしょう・雀の形の盃)や鴛鴦(おしどり)をかたどっている。歌人、詩人は杯が目の前に流れつくまでに詩を作り、流れて来た杯を取り、神酒を一献いただく。