【橋本】 デビュー間もない頃ってこんな歌い方もされていたんですね! (沢田さんは)『勝手にしやがれ』(1977)の頃のイメージが強いので、あまりにかわいらしくてびっくりしました。衣装もとってもリボンの騎士ですね。
【中将】 ザ・タイガースによって生まれたグループサウンズの王子様的傾向は、オックスの登場で絶頂に達します。オックスはボーカル・野口ヒデトさん(現・真木ひでと)、キーボード・赤松愛さんのかわいらしいルックスと、それとは対照的な過激なパフォーマンスで「失神バンド」と呼ばれていました。彼らのデビュー曲は『スワンの涙』(1968)。
【橋本】 ねっとりみを増して、いかにも昭和のアイドル的な感じになってきました! 多少、やらされてる感じもありますが、ご本人たちは違和感を持っていなかのでしょうか?
【中将】 違和感ありありだったそうです(笑)。もともとロックがやりたくてバンドを始めた人たちですからね。グループサウンズの王子様的スタイルはその後まもなく、やっている本人たちによって否定、過去の遺物化されるという皮肉な運命をたどります。しかし、その手法は旧ジャニーズ事務所が形を変えて踏襲。1970年代に郷ひろみさんという大スターを生み出しました。その郷ひろみさんのデビュー曲は、『男の子女の子』(1972)。
【橋本】 この時代から50年以上も第一線で歌い続けている郷さんってすごいですね……ファンの方たちにとってはまだまだ王子様! この番組を始めるまで郷さんが旧ジャニーズ事務所出身とは知らなかったので、初めてこの曲を聴いたときは驚きました。
【中将】 沢田さんもそうですが、デビュー後にさらに違うイメージを打ち立てているので、王子様系だったことを知らない人は多いでしょうね。
さて、その後、年を追うごとに王子様系アイドルは旧ジャニーズ事務所の専売特許のようになっていきますが、それでも1970年代にはさまざまな背景をもった王子様系アイドルが存在しました。漫画『ちびまる子ちゃん』で山根くんが愛してやまないアイドルとして話題になった城みちるさんもその1人です。デビュー曲は、『イルカにのった少年』(1973)です。
【橋本】 フリフリのシャツにタイトなジャケット、それに甘いお顔……このレコードジャケットは王子様系として完璧ですね! 今でもこの系統のファッションで出てくるアイドルって大勢いると思います。
【中将】 三田さんの登場から約10年で王子様系のファッションや売り出し方はほぼほぼ完成していたってことですね。