サービスを展開するなかで、西口さんは「アバターの活用は人の可能性を拡張させる」と確信しているという。
「見た目はマスキングされるけど、心はオープンになる。生身の人間のほうが、社会的地位や人との関係値に左右されて信用できないですよ。実際に保険会社では、顧客に年収や家族構成などデリケートな情報を自己開示してもらう必要があるため、アバターの指名率・売上率がナンバーワンというデータも出ています。リアルの延長線ではなく、リアルでできなかったことにチャレンジしようという発想でアバターをとらえることができるのは、八百万の思想やロボットアニメに親しんだ日本人のほうが有利かもしれません」(西口さん)
西口さんのコメントをうけ、平田さんもこのように応えた。
「『仮面劇』は、人類の歴史においても古くから用いられてきたコミュニケーション法です。人はもともと多様な人格を持っていて、日常生活においても仮面をかぶるように人格を切り替えている。話せなかった人が、アバターを介して話せるようになる可能性がある。教育の分野でも応用できますね。多くの人の福音になるのではないでしょうか」(平田さん)
働く人々のQOL向上、労働人口減少問題などの社会課題を、アバターは軽やかに解決してくれるのかもしれない。
※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2024年3月14、21日放送回より