兵庫県尼崎市の住宅街の一角にある、アパートマンションの一室。扉を開けると、中には国内では数少ない、効果音制作の収録を行う「フォーリースタジオ」を併設したレコーディングスタジオがあります。その様子をリポートします。
レコーディングエンジニアであり、代表の家崎大さん(※「崎」=たつさき)が運営する株式会社こだまプロダクション。尼崎と大阪府豊中市の2拠点にスタジオがあり、映像やゲームの音響制作、ボイス収録を主に行っています。
そのうち、尼崎にあるのが、いま注目されているフォーリースタジオです。
フォーリーとは映像を再生しながら、それに合わせて「足音や布ずれ」などの動作音を録音する手法で、効果音集の素材を編集するのとは違い、「演じる」ことでよりリアルなサウンド表現を行うことができます。
昨今はアニメや吹替作品など映像コンテンツの増加に伴い、フォーリーの需要も増えてきていますが、国内のフォーリースタジオはとても少ない状況です。
こだまプロダクションのフォーリースタジオは、アパートの1階部分の、床がない地面そのままの部屋を改造しています。床の上にスタジオを作ると、どうしても地面の響きが変わってしまうそうで、エンジニアの家崎さんの要望もあり、スタジオを応援するアパートの持ち主が特別に床を作らずに貸してくれたそう。
棚には演劇で使用するようなたくさんの小道具がびっしりと並び、それらは様々な効果音制作で使われます。一番奥に並んだ靴は数ある中でも「思い通りの足音が再現できる靴」だそうで、音の良さは靴の値段に関係ないとのこと。
ほかにも水の音を収録するためのゴム製の巨大なバケツは動物園で使用する特別なもの。リアルな効果音のために小道具もこだわりのものを揃えているといいます。
別室には編集や、ナレーション録音ができるスタジオがあり、ASMR収録でおなじみのバイノーラルマイク「KU100」(ノイマン社)もあります。コントロールルームの後ろにはたくさんのハンディレコーダーが並び、時には家崎さんが自ら山や海にフィールドレコーディングに行くことも。