――この装置によって、農業人口の増加を目指しているのでしょうか?
【須貝さん】 その通りです。私たちは、(農業の)業界に“企業”という組織をどんどん巻き込んでいき、農業人口を増やしていきたいと思っています。工作放棄地もなくしたいし、食料自給率も上げたい。未来の子どもたちに安心安全の野菜を作ってやれるか、そういうビジネスを提供できるか、というのが弊社の事業使命だと思っています。
――装置を開発するうえで、最も難しかったことは?
【須貝さん】 まず、受け入れられるかどうかですね。あやしい会社だと思われちゃうんですよ。「土を使わずにおいしい野菜は作れない」と思っている方には、いくら説明しても理解してもらえないのです。食べていただけると反応は変わるのですが、その食べてもらうことができなくて苦労しました。
実は、農業界には個人農家さんがたくさんいらっしゃいます。ですが、企業農家は少ない。その企業農家を増やす仕組みを作ろうと動いてきたものの、なかなか理解してもらえないという苦労がありました。
――理解が広まってきたいま、神戸市では、野菜工場を使った新しい取り組みが行われているのですよね?
【須貝さん】 神戸市長田区で、社会福祉法人の方と一緒に室内農業を行っています。ハンディキャップをお持ちの方が主役になれる農業としては、同じ空間で、駅から近く、温度も一定で、危険な農機具を一切使わない室内農業が適正だと思っています。炎天下で作業を行うわけではないという点においても、ハンディキャップをお持ちの当事者の方はもちろん、親御さんの安心感がぜんぜん違います。
働く環境がとてもいいんですよね。それこそ、ラジオや音楽を聴きながら農業ができるわけです。自立支援の取り組みにもつなげていければと思います。
――今後の目標は?
【須貝さん】 生きている間に、何か農業界に貢献したいと思っています。まずは、来年開催予定の大阪・関西万博で、室内農業の最先端技術を世界に向けて発信していければと考えています。一次生産者、農業に携わる方々のステータスを上げていきたいです。
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室内の野菜工場装置で、野菜を安定的においしく作るだけでなく、農業人口の増加を目指して奮闘する須貝さん。「いろいろなところで植物をたくさん育てれば、二酸化炭素を減らすこともできるかもしれません」と環境問題にまで目を向け、「農業を通じてさまざまな問題を解決したい」と意気込んでいました。
※ラジオ関西『Clip 木曜日』2024年4月11日放送回より