――世界からも注目されているのでは?
【池田さん】 昨年からアメリカの宇宙関係の学会でブース展示などをしているのですが、実験ユニットを国際宇宙ステーションに納品している企業は興味を示してくれています。ただ、いざ実験しようと思うと、顕微鏡でうつすことができるだけでなく、普段は手作業で行っていることを自動化しなくてはいけないので、そういう仕組みづくりを頑張っています。
地上で顕微鏡を見るときに、対象物がうつっていなかったら手で動かしますよね。そういった動きを自動でしなければならない、ということです。あとは、生き物を観察することが多いと思うので、細胞だったりプランクトンだったり、いろいろなものを生かしておくための仕組みづくりが今後の課題です。
――宇宙で生き物の観察があるのですか?
【池田さん】 ありますね。といっても、宇宙に生き物がいるというわけではなく、宇宙に地上の生き物を連れていき観察を行います。重力がないと地上と同じような振るまいができない生き物は多くて、地上とは異なる動き方をします。たとえば、魚だったら光がないと上下がわからなくなってしまうし、植物も根や茎をどちらに伸ばせばいいかわからなくなるようです。
今後、人類が宇宙に生活圏を拡大というか、宇宙旅行だったり月面に人が住んだり、火星まで行ったりだとか、宇宙飛行士ではない普通の人が宇宙に行くときの生活を支えるための研究が必要になると考えている人たちが多く、僕らはそういう研究を支えていければと。もちろん、チャンスがあれば僕自身も宇宙に行ってみたいな、と思っています。
――その夢をこんな小さな顕微鏡で叶えられるというのは、すごいですね。
【池田さん】 そうですね。まだ完成したわけではないので、すごいと信じている、が正しいでしょうか。いまの状態だと、ちょっとした顕微鏡というだけなので。研究の世界で使われている顕微鏡にはすごい機能がもっとあるので、そこに追いつくための開発も進めています。
国際宇宙ステーション「ISS」は、2030年には退役します。後継として、NASA主導の民間宇宙ステーションが建造される計画もあるそう。現在、年間2000機以上の人工衛星が打ち上げられていて、今後は人工衛星でさまざまな実験が行われる時代になると思います。
いままでは、限られた人しか国際宇宙ステーションで研究ができませんでした。さらに、実験をしてもらおうとすると1時間550万円ほどかかるうえに、計画から実験まで時間もかかる。しかし、人工衛星に僕らの作る顕微鏡をつけて研究ができれば、まだわかっていないことがわかる可能性が十分にあると思っています。
国際宇宙ステーションでの研究は、国の協調の場であり国の予算で動いているのですが、そこを民営化したいと思っています。お金さえあればどんなチャレンジでも受けつけて、成功確率も関係なく研究を応援したいと思っています。そこから、僕らの作った実験プラットフォームで大発見があればうれしいですね。