政府の新型インフルエンザ等対策推進会議が4月、深刻な感染症への対応をまとめた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定案を示したのを受け、全国指定都市市長会(会長 / 久元喜造・神戸市長)は20日、多くの人口を抱える指定都市の実情に応じた対応を求めた「緊急要請」を内閣府に提出した。
同会は、人口・人流が集中する指定都市(※)などの大都市圏域では、感染症拡大などの緊急事態に迅速で柔軟に対応することが必要であるため、▼指定都市と国が直接、情報を共有し、都道府県知事が持つ一定の権限を指定都市の市長へ移譲すること、▼交付金の直接配分、▼ワクチンの直接供給などを求めている。
要請書を受け取った内閣府の神田潤一・大臣政務官は、「関係機関の連携は大事だが、感染症対策のベースは都道府県である」との見解を述べたという。久元市長はこれを受け、「ゼロ回答に近い」と不満の表情を見せた。
久元市長はさらに、「3年あまりの新型コロナウイルスとの戦いで指定都市は最前線にいた。その経験を踏まえての提言という認識だ。コロナ禍では、医療提供体制の整備や医療機関との日常的な接点はほとんど指定都市が担っていた。都道府県単位ではない」と語気を強めた。
そして、「ワクチン供給に関して、現場(市町村単位に)に届かない、確保できない状態が生じた。神戸市では当時、予約していた市民1人1人にキャンセルの電話を入れるなど対応に追われた」などと振り返り、国と都道府県、市町村との情報共有の甘さが露呈した点を指摘した。
神戸市では、コロナ禍で旧環境保健研究所の体制を強化し、健康科学研究所と名称を改めてサーベイランス(監査)体制を整えた。そしてゲノム(全遺伝子配列)解析を行い、新たな変異株の発見につなげるなどした。
このことを踏まえ、久元市長は「各指定都市でもさまざまな実績がある。そうしたことを評価せず、都道府県しか相手にしないのは遺憾だ。(指定都市など)現場に対する配慮がない。コロナの経験が反映されていない。こんなことで次の感染症対策ができるのか」と疑問を呈した。
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