先輩と後輩ふたり、そして筆者の大人4名で回転寿司に行くことが度々あるのですが、いつも気になるのがボックス席での“自分の座る位置”。何が言いたいかというと「回転寿司の上座はどこなのか?」ということ。
目上の人には奥に座ってもらい、後輩は出入り口に近い方の廊下に座る……というのが一般的なマナーだと思うのですが、回転寿司店のテーブル席奥側は「レーンから寿司を取る」「タッチパネルで注文」「お茶を注ぐ」など多くの作業が発生し、先輩にそれらを任せてしまう可能性があります。
いったいどういう配置で座るのがベターなのでしょうか? 「回転寿司の専門家」と「マナーの専門家」にコンタクトを取り、それぞれに話を聞きました。
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“マナーの専門家”であるマナーコンサルタント・西出ひろ子さんは、着席においてのマナーについて「もともとは目上の人に“静かで落ち着く安全な場所”に座ってもらう……という意味があります。出入り口近くは、廊下などから人の声が聞こえて耳触りになったりすることも。飲食店の場合には店員とコミュニケーションを取ったり料理やドリンクを受け取るなど、積極的に動く必要があるのが出入り口に近い場所に座った人の役目となります。不審者が現れた場合に真っ先に目上の人を守ることができるのは出入り口に近い席であり、奥がいちばん安全な席と考えられています」とのこと。その上で、回転寿司店のボックス席はどうなるのでしょうか?
「過去に伺った回転寿司の店員の方のお話や席次の理論的な考え方を元にした場合、レーンから来る商品が見える席が上座。その対面に、もっとも目下の人が座ります。通常は序列の2番目が座るところですが、皿を取るなどの配慮が必要となるためです。2番目にあたる人は上座の隣、レーンから流れてくる品物が見える位置に。序列3番目は、もっとも目下の人の隣に座する……という意見があります」(西出さん)
「仮に通路側に目上の方が2名座った場合、最も目上の人は流れてくる品物がよく見えますが2番目の人はレーンを流れてくる品物を見て選ぶ時間が短くなり、食べたいお皿を取ることができなくなる可能性があります。また、この着席スタイルですと最も目下の人が最も目上の人の隣に座ることとなります。一般的な席次の理論においてこのケースは控えたいというところから、総合的に判断すると回転寿司屋では先述のポジションに座るのがベターだと考えます」と西出さんは解説。
いっぽう“回転寿司評論家“の米川伸生さんは「上座は圧倒的に廊下側だと考えます」と主張。いわく「レーン側の片方を上座に、その向かいを一番目下の人が座る……という意見の存在や理由も把握しています。ですが、皿や調味料の受け取りや受け渡し・タッチパネル操作・お茶汲みなどレーン側に座った人間に発生する作業は多く、一人でその仕事はまかないきれません。結局、レーン側に座るどちらもが何かしら働くことになってしまいます」とのこと。
その上で、寿司の流れがよく見える側かつ通路側が「①」。向かいの席が「②」。②の隣、レーン側が「③」。①の隣、レーン側が「④」というフォーメーションが米川さん的“ベターな配置”とのこと。「寿司の流れが良く見える所が上座」というのは一致したものの、通路側を上座と判断するのは「現場を見てきた結論」としています。
意見が分かれた形にはなりましたが、マナーコンサルタントの西出さんは「回転寿司だけでなく他の飲食店であっても、上座・下座の位置は『絶対こうである』と言い切れるものではなく、決まりごとでもない」と言います。
「マナーとして大事なのは、目上の人が座りたいところに座ってもらうこと。そこが上座となるわけです。『レーン側に座りたい』と仰るのなら『私のお皿をとっていただくことになり恐縮なのですがよろしいでしょうか』と確認するなど、必要に応じてコミュニケーションを取ることが重要です」 (西出さん)
(取材・文=宮田智也)