例年、梅雨入りの時期に設定された雑節「入梅」(2024年は6月10日)を前に、全国的に青梅の摘み取りが始まり、梅酒づくりのシーズンが到来した。
チョーヤ梅酒株式会社(本社・大阪府羽曳野市)では、入梅前の5月30日、和歌山県紀州産の南高梅(なんこううめ)の漬け込み作業が始まった。
かつてブドウ酒を製造していたチョーヤは、1959(昭和34)年に梅酒の製造・販売を始めた。
以来、この時期に梅の実の肥大状況を見ながら梅の漬け込みを始め、「入梅」前後をピークに約1か月続く。
チョーヤでは「梅酒」に適した紀州産(※)南高梅を中心に、古城梅、白加賀梅など数品種の国産梅を使用している。特に和歌山県紀州産南高梅は果肉が厚く、酸度が高いのが特長。同社で使用する梅の約8割を占める。
手摘みされた梅は丁寧に洗浄され、最大容量10万リットルの熟成タンクに漬け込まれる。タンクは特注で、光、熱、空気など外部からの影響を極力受けないように設計、3つの工場で合わせて446基ある。
チョーヤの金銅俊二・専務取締役によると、今年の梅は暖冬の影響で落葉果樹の休眠期間が不足したため、「不完全花(実を結ばない花)」が多く、収穫量が減少傾向にあるという。
また3月20日に和歌山県南部の広範囲で雹(ひょう)や霰(あられ)が降ったため、果実に傷のある梅が多いが、「品質に影響はなく、例年通りのクオリティと製造量を維持できる」としている。
※農林水産省によると、2023(令和5)年産の梅の収穫量は全国で約9万5000トン。このうち和歌山県では6万1000トンと、全国の約64%(昨年は約67%)を占める。59年連続全国トップ。2位の群馬県が5520トン(約6%)で、この2県の収穫量が全国の7割を占める。