◆ 誰でも配信できる令和 実は50年前でも簡単にできた?
さて、ここからがこのラジオの真骨頂なのですが、PUSH TALK LOCKボタンが配置されている内蔵MICの存在です。
FM電波を使うトランスミッターが内蔵されており、実際の放送がない周波数やノイズの少ない周波数帯に合わせて、別のFMラジオ機器に音声を飛ばすことができました。電波は微弱で実際に実験してみると周囲10数メートル程度のものですが、それは立派なラジオから聴こえてくるパーソナルなラジオ放送と言えます。
今の時代、YouTubeなどで簡単に個人のネットラジオ番組を放送することができますが、50年も前の時代に非常に狭い範囲ですが電波を飛ばして放送ができたわけです。深夜ラジオ全盛時ですので、これは10代の少年たちにとって驚き以外の何ものでもありませんでした。
◆予想外の使い方? ギター少年はアンプ代わりに!
さらに「AUX IN」(オグジュアリーのインプット端子)、すなわち、外部音声入力端子が付いていたことも、驚くポイントです。今どきの小型の音響機材にはステレオミニの外部端子が付いていないものも多いのですが、AUX INはあると何かと便利な入力端子です。外付けマイクを接続できると当時の説明書には書いてありますが、その時代のエレキギター少年たちはこの端子にギターをつないでアンプ代わりに使っていたことも多かったよう。完全な入力ゲインオーバーの状態になり、ひどく音割れしていた状況ですが、子どもたちは流行していたエフェクターのファズ(Fuzz)のように使っていました。
このように昭和の真っただ中、1970年代に登場し、少年たちを魅了したスカイセンサーICF-5500。良き昭和のノスタルジーを感じさせる名機であることを、この機会に改めて思い知らされました。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』2024年6月3日放送回より
(文=須藤達也 / 会社員のかたわら、ラジオの受信技術や電子工作を中心に雑誌やブログにてテクニカルライターを担当)