神秘的で迫力に満ちた仏像、桃山文化を感じるきらびやかな空間も―。京都の古刹、醍醐寺(京都市伏見区)の寺宝を紹介する展覧会「開創1150年記念 醍醐寺 国宝展」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。平安時代前期創建の同寺が所蔵する数多くの名品の中から、国宝14件、重要文化財47件を含む約90件を選び、前期と後期に分けて公開。
展覧会は3章立てで、第1章「山の寺 醍醐寺」は、ほぼ国宝と重文で構成されている。中でも目を引くのは、「大威徳明王像(上醍醐五大堂五大明王像のうち)」(平安時代・重文)。寺創建期に作られ、上醍醐のお堂に祀られていた同像は、5つあった明王像のうち唯一、複数回の火事をくぐり抜けて現存する“奇跡”の像だ。17世紀の初めの火事では、修理のためたまたまお堂から出ていて難を逃れた。
大きく見開いた眼、つり上がったまなじりで怒りの表情を浮かべるが、6本の腕のラインはしなやか。展覧会を監修した内藤栄・大阪市立美術館館長は、「顔の筋肉はムキムキしているが、体に筋肉の盛り上がりがない。不動明王のお経に『体は赤子のようである』とあるので、それに従ったと考えられる」と指摘。腕について「見る者に恐れを感じさせるような振り上げ方でなく、バランスの取れた美しさがある」とし、「静かな中にも怒りを秘めた、魅力的なお像」と紹介する。
一方、同じく創建時に作られた「如意輪観音坐像」(平安時代・重文)は、穏やかで優美な表情。首を傾け頬に手を当てるのは、民を思う様子を表し、右手に持つ数珠は人々を苦しみから救うためとされる。ところどころはげた表面の金箔が、たどってきた長い歴史を伝える。
第2章「密教修法のセンター」では、平安~鎌倉時代、同寺が密教における加持祈祷の研究所のような役割を果たしていたことに焦点を当て、密教の宇宙観を示した「両界曼荼羅図」(鎌倉時代・重文)、迫力あふれる「不動明王坐像 快慶作」(同)などを展示。