【橋本】 本人たちにとっては残念だったでしょうね。現代でもいろんな規制はありますが、もうちょっと柔軟ですよね。
【中将】 残念ながらヒット曲にはなりませんでしたが、この事件は全国のブルース、ロックファンの注目を集めるきっかけになりました。ただ、日本のブルースバンドの代表格とされながら、どブルースばかりでないのが憂歌団の面白いところ。その1つが、平成に入ってからの曲になりますが、『純愛だけど朝帰り』(1993)です。
【橋本】 すごくお洒落! ラテンみたいなサウンドですね。
【中将】 花岡さんの作曲で、歌詞はなんと阿久悠さんなんですよ。花岡さんはお若い頃、ブルースはあまり好きじゃなくて、歌謡曲やグループサウンズ、ビートルズが好きだったと仰っていました。阿久悠さんとのコラボはうれしかったんじゃないでしょうか。
実は一度、花岡さんをザ・タイガースの瞳みのるさんと森本タローさんのジョイントライブにご招待したことがあるんです。楽屋で憧れのピー、タローに会ったときの笑顔は忘れられません。握手して真っ赤になってるの(笑)。ライブもとても感激しておられて、『君だけに愛を』(1968)のときとかはもうステージに釘付けでした。
【橋本】 中将さんならではのエピソードですね。
【中将】 花岡さんとは音楽の話もしたけど、興味の幅が広いんですよね。世間では憂歌団と言えばブルースというイメージだけど、実は背景にいろんな音楽の引き出しがあったからあれだけ豊かな表現ができたんでしょうね。
さらに、2014年には、KENJI HANAOKA&Kenshiro名義で、シングル『あなたの笑顔』のカップリング『空よ 山よ 雲よ 風よ』をリリースしています。こちらは花岡さんがリードボーカルを担当。晩年に過ごされた熊本で、老人ホームなどを経営している会社のテーマソングにもなりました。
【橋本】 これは憂歌団時代とは全然違うテイストの曲ですね。本当に幅広い!
【中将】 都会を離れ熊本の自然に囲まれて過ごす中で、いろんな心境の変化もあったそうですね。
花岡さんとは何度か飲みに行かせてもらいましたが、新開地の商店街にある正宗屋という居酒屋を紹介したところ、とても喜んでくれました。晩年は熊本にお住まいだったので、関西のだしの味が懐かしいと。また飲みに行っていろんな店を紹介したかったです。ご冥福をお祈りします。