絵画にとどまらず、近年では陶芸や版画の制作でも知られ、展覧会の企画や批評テクストの執筆など多岐にわたる活動を展開する美術家・梅津庸一の約20年に渡る仕事のすべてを見せる大規模な個展・特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」が、国立国際美術館(大阪市北区)で開かれている。2024年10月6日(日)まで。
会場に並んでいるのは、自画像、ドローイング、ヤシの木のオブジェに版画、それにビジュアルバンドとのコラボレーションもある。2000年代半ばにスタートした梅津の活動の軌跡を追う試みとなっている今展は、展示室を進む度に変化があり、梅津の多岐にわたる活動を実感できる。ただ「単なる回顧展ではなく、彼のどの仕事にも存在する『つくるとは何か?』という問いに、考えるきっかけ、場所になることが今展の目的です」と、同館の福元崇志主任研究員は話す。
梅津は日本の洋画の歴史を参照しつつ、裸の自画像を手掛けることで知られている。第1章では、小学校6年生の時、そして大学生の時に描いた作品やデビュー作となった作品、そして「日記のように大量に描いていた」(梅津)ドローイングの一部などが展示されている。
梅津は自らの活動を「花粉」になぞらえることがある。空気中を漂ってどこに広がるのか、どこにたどりつくのかわからない、いわばメッセージを伝えるようなものだという。2021年に滋賀県・信楽に移住した梅津は、作陶に取り組む。長引くコロナ禍の閉塞感に疲れ、制作意欲を取り戻すため土と向き合った。その中で制作した『花粉濾し器』について梅津は「陶芸は器を作るものだけど、フライパンをひっくり返して器の機能をなくし、そこに表現としての垂直の棒を立てて左右非対称のフィルター、ラケットのようなものをつけた。花粉をキャッチするというイメージ。熱に負けて曲がったりひび割れたりしているが、そういうアクシデントも受け入れ、陶芸における自画像のような作品」と解説する。
美術家が作品をつくるには、多くの人、施設に支えられている。例えば陶芸では窯、版画では摺師というように。第4章では、壁紙もすべて作品だ。「70センチ×1メートルを800枚刷った。自分が刷ったものもある。プロの技も見ることができるが、歪んでるのが作家っぽい」と振り返る。