いま、広く世界的に展開されているSDGs。持続可能な社会を作るための17の目標が掲げられています。その中で、自然からの学びを生かして商品を開発、社会問題を解決しようと活動する団体が兵庫県姫路市にあります。「ナチュラル・ソリューション」代表の福岡譲一さんに、同団体の研究開発や地域活性化の取り組みなどについて聞きました。
ナチュラル・ソリューションは、関西のハーブ園の先駆けとして1984(昭和59)年に開園した「香寺(こうでら)ハーブ・ガーデン」に関わる人たちで構成。その名の通り、「自然(ナチュラル)」を「解決(ソリューション)」につなげることをコンセプトにしています。
福岡さんによると、同団体が開発したものの一つに、血液・細胞の保存液があります。大根から抽出した成分“ペプチド”を用いたもので、「世界中の“頭脳”を集めて」(福岡さん)製薬会社と協力して開発されたとのこと。冬の朝に凍った大根が、昼頃に溶けて再生するメカニズムを解明したことによって生まれたこの保存液は「今の試薬と比較して約4~5倍の効果がある」と福岡さんは説明しました。
活動は研究開発に留まりません。地域産のものを地域内で加工・販売することで、人口減少問題の解決や経済活性化を目指しています。また、福岡さんが主に活動する姫路市夢前町山之内地区に設けた同団体の研究所は、廃校になった小学校の校舎を再利用しました。
今年5月には姫路市と協力し、ボランティアを募集してハーブ・カモミールの収穫を行ったり、同団体の手がける加工品が姫路市のふるさと納税の返礼品に選ばれたりするなど、地域貢献活動や市との相互支援にも積極的です。
特に山之内地区は、高齢化や過疎化の影響で病院や農協が閉鎖し、住民が農業を続けるのが難しいという問題を抱えていました。そこで福岡さんは、地域再生に向けた株式会社を設立し高齢の住民を雇用。年金だけでは生活できないけれど、働くにも体力との相談が要ると悩む人たちに、午前中のみハーブの栽培などに就いて働ける環境を生み出しました。
さらに、廃園となった地区内の幼稚園を活用したレストランをつくり、地域で採れた野菜やハーブを使った料理を提供しています。食べる人の健康を意識して作られる料理は、病院の院長から「うちの病院食として出してほしい」と声がかかったこともあるほどだそう。