伝統の味、守りたい イカナゴに代わりシラスを使った「くぎ煮」を発売 神戸の老舗つくだ煮店 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

伝統の味、守りたい イカナゴに代わりシラスを使った「くぎ煮」を発売 神戸の老舗つくだ煮店

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 兵庫県の郷土料理「くぎ煮」の伝統を絶やしたくない―。そんな思いで、老舗つくだ煮店「樽屋五兵衛」(神戸市兵庫区)が、深刻な不漁に直面しているイカナゴに代わり、シラスを使った商品「生しらすのくぎ煮」をこのほど発売した。同店の人気商品「いかなごのくぎ煮」と同じ“秘伝のたれ”で炊き上げたもので、同店は「シラスのくぎ煮が『夏の風物詩』として地元の食文化の1つになれば」と期待を寄せている。

「生しらすのくぎ煮」が並ぶ売り場(神戸市中央区の大丸神戸店)

 イカナゴの稚魚シンコをしょうゆと砂糖、ショウガなどで甘辛く煮たくぎ煮は、瀬戸内海に春の訪れを告げる郷土料理として長年、地元で愛されてきた。水揚げの季節になると、とれたてのイカナゴがスーパーなどに並び、大量購入した人が家庭でくぎ煮を作り、容器に入れて知人らに配る“文化”もあった。

 だが近年、イカナゴの漁獲量が激減。2016年までおおむね毎年1万トン以上だったが、2017年以降は1000トン台に急減、2020年は過去最低の142トンを記録した。資源保護のため、今年の漁は兵庫県の播磨灘でわずか1日、大阪湾では休漁となった。同店でもイカナゴが入手しづらくなり、今年の「いかなごのくぎ煮」の製造量は大幅減、販売価格も20年前の約10倍に設定せざるを得なかったという。

垂水漁港(神戸市)で水揚げされたシラス

 そこで同店は、イカナゴに代わるものとして、初夏、神戸市の垂水漁港に揚がるシラスを使った新商品を開発。代表取締役の高田誠司さんは「神戸沖でとれたシラスには、カルシウムやタンパク質、ビタミンDなど多くの栄養素がある。水揚げ後、丸大豆しょうゆを使った『秘伝のくぎ煮たれ』で丁寧に仕上げた。シラスはイカナゴよりもサイズが小さく、子ども、高齢者にも食べやすい」とPR。

 一方、別の地域でシラスを使った「くぎ煮」という名称の商品が発売されていることにも危機感を覚えているといい、「『くぎ煮』のルーツはあくまで神戸。『生しらすのくぎ煮』が地元に根付く新たなくぎ煮となれば。多くの人に味わってほしい」との願いも込めた。

「生しらすのくぎ煮」。賞味期限は常温60日

「生しらすのくぎ煮」は80グラム1080円(税込)。同店のほか、大丸神戸店(神戸市中央区)などで販売している。問い合わせは樽屋五兵衛、電話078-652-1620。

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