近年、新たな取り組みで脚光を浴びている兵庫県尼崎市のミニシアター・塚口サンサン劇場。このたび、同館のスタッフがその挑戦をノンフィクション本につづりました。
「人生に必要なもの。それは少しの勇気と、塚口サンサン劇場」
これは今年5月に発売された『まちの映画館 踊るマサラシネマ』(西日本出版社)という本の帯に書かれている言葉です。
1978年7月7日に開館した、塚口サンサン劇場。尼崎市の阪急塚口駅から南出口を出て東へすぐ、「さんさんタウン」の一角にあるミニシアターは、昭和から続く一般映画館としては尼崎市内で唯一の「まちの映画館」です。
『まちの映画館 踊るマサラシネマ』の著者で、塚口サンサン劇場の戸村文彦さん。同館の魅力について、次のように明かします。
「もう、なんでもありの映画館。皆さんが楽しんでいただけること、見たい映画、それを1本でも多く上映して、映画館を好きになってもらいたい。別にそれは塚口サンサン劇場に限らず、近くの映画館であったり、映画館で映画を見る楽しさを伝えていきたいという、それがうちの劇場の基本的なモットー。だから、もうおもしろいことは何でもやろうっていう映画館ですね」
地域の映画館でありながら、“わざわざ行きたくなる”映画館として、全国からファンが訪れることも。その秘密は一風変わった上映にあります。数年前から行われ、当時ニュースなどにも取り上げられた、同館名物の「マサラ上映」です。
「マサラ上映」とは、インド映画を上映する際に、映画に合わせて踊り、紙ふぶきやクラッカーも使ってにぎやかに鑑賞する上映方法です。
塚口サンサン劇場では、2013年の『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』上映時に初めて行われました。最近では、洋画やアニメまで「マサラ上映」をすることもあるそうです。
他にも、スポーツ観戦やコンサートのように声援を送りながら見る「応援上映」や、ライブ用の音響機材で迫力ある音質と音量を楽しむ「重低音上映」、飲食しながらの上映や、映画の感想を後で語る会など、様々な上映方法を行っています。
「怪談イベントというのもやりました。怪談師の方に来ていただいて怪談を聴いたあとに、怪談映画を上映しました」と話す戸村さん。これらの上映方法を通して「映画を楽しんでいただいて、映画をきっかけにいろんなものに趣味、思考を広げていただくと、 より楽しいんじゃないかと考えています」と“おもしろいことは何でもやる”映画館の姿勢を改めて語りました。