今にも動きそうないきものたち 命の輝きを彫刻で表現 はしもとみお展 神戸ゆかりの美術館 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

今にも動きそうないきものたち 命の輝きを彫刻で表現 はしもとみお展 神戸ゆかりの美術館

LINEで送る

この記事の写真を見る(13枚)

 5時46分を指した時計。その傍らにはイヌやネコ・・・今にも動き出しそうだが彫刻作品だ。阪神・淡路大震災の経験から彫刻家を志し、動物たちの命の輝きを彫刻という形で残す、はしもとみおの展覧会が、神戸ゆかりの美術館(神戸市東灘区)で開催されている。2024年9月16日(月・祝)まで。

展示風景
展示風景

 会場にいるのは「彫刻」の動物たち。すべてにモデルが存在する。はしもとの身近にいる動物や旅先で出会った動物たちだ。はしもとはそれぞれの個性や共に過ごした時間をそのまま再現している。その瞳には輝きがあり何かを訴えかけているよう。だからこそぬくもりや息づかいが伝わり、「今にも動きそう」だと感じる。

「トム」2003年
『トム』2003年
『ゴン』2023年
『ゴン』2023年

 兵庫県で生まれ、幼少期から10代までを尼崎で過ごし、15歳の時に阪神・淡路大震災で被災した。獣医になる夢を持っていたが、震災で動物たちのいる風景が一瞬にして失われるという光景を目の当たりにし、たとえ失われた命であってもその輝きを彫刻という形で残したいと考えるようになったという。今展では、「時間」をテーマに、モデルとなった動物たちが生きてきた時間と、はしもとみお本人が過ごしてきた時間をつなげて、その軌跡をたどる。被災後から美術大学在学中の作品、作品制作のため丁寧に観察した動物のスケッチ、モデルとなった動物たちのそれぞれの個性を記録したメモ、そして「朝練」と称して毎日描き続けていたスケッチなども紹介する。

左:『ニュリ』2015年 右:『二代目 月』2018年
左:『ニュリ』2015年 右:『二代目 月』2018年
展示風景
展示風景

 小学校の時に近所の酒屋から譲り受けたという「ゴン」。わずか1か月半ほどで天に旅立ったが、その死がきっかけで獣医を目指すようになった。アラブで出会ったラクダやスナネコや、海のいきもの、そして、「ブサカワ犬」として全国的に有名になった秋田犬の「わさお」も。「『わさお』は抱きしめて香りも感じてください。何の木で作られているか想像してみてください・・・クスノキなんですが、わかりますか?」と同美術館の辻智美学芸員。

『ラクダのおとな』2010年
『ラクダのおとな』2010年
『わさお』2021年

 はしもとは「これまでいくつかの会場を巡回したが、阪神・淡路大震災を経験し、生かされて守られた神戸への恩返しのような気持ちがあります。兵庫で暮らしていたころ一緒に暮らしていたゴンちゃん、トムくんを彫刻としてよみがえらせる機会をいただきました。自分の愛の原点というか、亡くなったいきものたちの魂と向き合う時間はかけがえのない制作でした」と振り返る。また順路を「ネコ」が案内したり、ソファで「動物」がリラックスしていたりと、会場づくりにもこだわったという。

『初代 月』2007年
『初代 月』2007年
『シナモン』2015年
『シナモン』2015年 まるで順路を示しているよう
LINEで送る

関連記事