【中将】 さて、一杯のコーヒーと男女の恋心。こういったイメージの結び付きはどのように生まれたのでしょうか? コーヒーをテーマにした楽曲は戦前から存在しますが、例えばこんな曲も。霧島昇・ミス・コロムビアで『一杯のコーヒーから』(1939)。
【橋本】 85年前!
【中将】 「一杯コーヒーから 夢の花咲くこともある」という名フレーズで知られるこの曲。服部良一さんが曲を書いた時点での仮タイトルはお酒好きだった服部さんらしく『一杯のビールから』でしたが、作詞を手がけた藤浦洸さんは下戸だったので、このタイトルに変えられてしまったという話が残っています。
【橋本】 たしかにコーヒーから始まる恋のほうが爽やかで、ポップスの歌詞的にはふさわしいですよね(笑)。今でも“一杯のコーヒーから始まる恋”ってたくさんあるんじゃないでしょうか。
【中将】 出会いあれば別れあり。コーヒーは別れのシーンを印象付けるアイテムとしても用いられてきました。たとえばこんな曲があります。おがた愛さんで『別れのブラックコーヒー』(1973)。『スター誕生!』(日本テレビ)からデビューしたおがた愛さんのデビューシングルです。「ブラックコーヒー 苦さがしみるわ」……喫茶店でコーヒー飲んでるテンションとは思えない絶唱!
【橋本】 向かい合った恋人の心がもう自分にはないことに気づいたという内容ですね……でも女性としてはそういう沸々とわき上がる感情は理解できますよ(笑)。
【中将】 最近は甘酸っぱいテイストのコーヒーも流行ってますが、別れの歌に出てくるコーヒーは昔ながらの深煎りでビターな一杯が似合いますね(笑)。ちなみに菜津美ちゃんはどんなコーヒーが好みですか?
【橋本】 昔、コーヒーショップでアルバイトをしていたことがあって、そのときは濃くてクセのあるタイプをいろいろ飲んでました。でも最近は暑いということもあって、アイスでさっぱり飲めるタイプのほうが好きですね。中将さんはいかがですか?
【中将】 ファミリーマートの「世界No.1バリスタが認めた」シリーズの無糖カフェラテばかり飲んでます(笑)。ブラックも好きだけど、いかんせん知識がないんですよね。「これがブルーマウンテン、これがモカ」とか言われたらわかるんですが、まだまだ理解できてない。
さてお次で最後のコーヒーソングになります。野口五郎さんで『私鉄沿線』(1975)。
【橋本】 鉄道ソングとばかり思っていて、コーヒーが出てくるのを見過ごしていました(笑)。「僕の街でもう一度だけ 熱いコーヒー飲みませんか」って歌っておられましたね。
【中将】 作詞を手がけた山上路夫さんが、若い頃によく乗った郊外に向かう私鉄の沿線をイメージしたということです。この曲も感極まりすぎて熱いコーヒーを飲むテンションじゃなくなっているのが面白いです。あと個人的には「あの店で聞かれました 君はどうしているのかと」というフレーズも引っかかりますね。
【橋本】 誰と来たかみたいな話を飲食店であまりしてほしくないですよね(笑)。特にバーみたいなお店だと、口固いのは必須です!
【中将】 我々、ろくでもない話もしますからね(笑)。