2022年(令和4年)、「菓銘をもつ生菓子」が文化庁の審査を経て登録無形文化財に登録された。「菓銘をもつ生菓子」とは季節の風物や日本の習俗などを色形で表現し、その意匠に名前が付けられた生菓子のこと。和食ブームの影響もあってか、和菓子は外国人にも人気が高い。
とはいえオンラインショップなどで販売をしていない、いわゆる“町の和菓子店”はコロナ禍で窮地に立たされているケースも多い。神戸市長田区にある老舗の和菓子司「橘屋」もその一つ。代表取締役社長の谷本雅浩さんは社長という立場から、従業員や家族、さらに守らなければならない商品を抱え大いに悩む日々だったという。
「このままでは店が潰れてしまうということで従業員と相談をした結果、それぞれが力を活かして営業をかけようということで老人ホーム・学校・お茶の先生など、手当たり次第100か所以上に電話をかけました。反応があったのは1つか2つ。ですが、その縁を大切にしながらなんとか乗り切り今に至ります」(谷本さん)
橘屋は1956(昭和31)年、谷本さんの父親が創業した。主に“練りきり”を使った上生菓子を販売する和菓子店で、「これまではOEM先の企業から商品の発注が時期ごとに当たり前のように来る状態でした。そのスタイルで何十年もやってきていたので、そこにあぐらをかいてしまった部分は非常に反省しております」と谷本さん。
先人たちの作品でもある“四季を大切にした季節ごとの和菓子”を推しつつも、最近ではキャラクターを表現した和菓子の注文も増えているという。百貨店からの発注は相当な数にのぼるため、結果的に多くの人の目と舌を楽しませている。
新しい店舗展開などをすすめられることもあるそうだが、「自分が今信じている仕事を正しくやって、何十年も頑張ってくれている従業員と少しでも長く頑張っていきたい」と谷本さんは話していた。
※ラジオ関西『三上公也の朝は恋人』より