北海道函館市で8月下旬に行われたモルックの世界大会で、日本のチームとして初めて、兵庫県明石市のチームが優勝しました。驚くべきは、設立からわずか3年ほどでの偉業達成ということ。彼らはいったいどんなチームなのでしょうか。チームの代表に話を聞きました。
約670チーム、3300人が参加した「2024モルック世界大会 in函館」(8月23日〜25日)。アジア初開催となった同大会で、世界一に輝いたのが、明石モルック倶楽部です。
モルックはフィンランド発祥のスポーツ。木の棒を交互に投げて点数が書かれた「スキットル」と呼ばれるピンを倒し、合計で50点になるよう競うものです。難しいルールはなく、老若男女問わず、誰でも気軽に始めやすいのが特徴です。
明石モルック倶楽部代表の室屋拓さんがモルックに出会ったのは大学3年生のとき。所属していたゼミでマイナースポーツの魅力や可能性について研究することになったのがきっかけでした。
「コロナ禍だったので、人数を多く必要とせず手軽に体験できるものを探してモルックにたどり着きました。全くやったことのない競技でしたが、始めてすぐにのめり込みました」(室屋さん)
単純な競技ながら、一投ごとに盤面が変わり、相手の得点、試合状況を見ながら、戦術を組み立て、投げ方を変えていく……。この奥深さにハマり、競技を始めてすぐ2021年6月、明石モルック倶楽部を立ち上げました。
当初、チームはゼミのメンバーが中心でしたが、練習や試合を通じて徐々に人数が増えていき、今では室屋さんの母親までメンバー入り。20代から50代まで幅広いチーム構成でモルックに打ち込んでいるそうです。
それにしても競技を始めてわずか3年ほどで世界王者とは、にわかに信じがたいもの。
室屋さんは「とにかく勝ちたいという思いが強いからだと思います」と話します。ただし、その強すぎる思いがゆえに、大会前に不安な点もあったと言います。
「実は今年6月に行われた国内主要大会『モルックジャパンオープン』(愛媛・今治で開催)では散々な結果に終わり、仲間同士で敗因をめぐりぶつかり合っていて、この世界大会前日までチームはまとまった状態とはいえませんでした」(室屋さん)
そのなかで迎えた世界大会当日。15の国と地域から、672チーム、3300人余りが参加。チームとしては初めての世界大会です。
緊張から思わぬミスが出てしまう場面もあり、モルックジャパンオープンの結果が頭をよぎります。それでも一投一投、丁寧に投げることを意識し、勝利を重ねていきました。
「勝ちたい気持ちは皆同じ。全員が必死になって勝利を目指すなかでチームがひとつにまとまっていったのがわかりました」と室屋さん。決勝ではフランスチームを破り、日本初の世界王者に輝きました。