障がいのある人が働く福祉事業所での仕事内容が、年々多様化している。パソコンを使ったデジタル系の作業を行う事業所がここ数年で増加傾向にある中で、神戸市内にある就労継続支援B型事業所では、主に着物からのリメイク商品を制作し、販売している。
「アトリエRin」(中央区、以下Rin)は、元々オーダーメイド着物の販売などを手がけていた代表取締役の高嶋孝仁さんが設立(「高」は、はしごだか)。日本の伝統である着物文化をより広げていきたいという思いから、着物のリメイクを障がい福祉の分野に取り入れた。
“就労継続支援B型事業所”は、障がいのある人が希望する働き方を実現するためのステップとして、作業に取り組みながら社会復帰を目指せるよう支援する。「Rin」という名前には、「事業所としてみんなで“輪”(わ・りん)になって一つのことを成し遂げる」という意味や「凛とした生き方をしていこう」との意志が込められている。
Rinの着物リメイク作業では、まず着物の糸をほどいて分解し、洗ったのちアイロンをかけて反物の形に戻す。キレイなものはそのまま販売するが、傷んでしまったりキズがあったりするものは使える部分だけを切り分け、日用雑貨や洋服に作り替えて販売する。
Rinでは、こうした作業を在宅で進める人も受け入れている。実は以前は、就労継続支援B型事業所では原則、在宅での作業が認められていなかった。しかし、コロナ禍で多様な働き方が認められるようになって福祉制度も大きく変わり、在宅での作業が可能になったためだ。
高嶋さんはかねてから、「すごい技術を持っているにもかかわらず、“人に接する”という部分が難しくて事業所に通えない人が潜在的に多いと感じていた」という。Rinでは、職員が定期的に作業者のもとを訪問して材料交換をしたり、制作された完成品を受け取ったりするなど、在宅作業の支援にも力をぐ。
オープンして2年半ほどが経過し、商品数や販売できる場所も徐々に増加しているそう。去年は初めて海外での販売にチャレンジ。フランスのモンペリエで開催された、日本をテーマにしたイベントに2日間出店した。