兵庫県明石市には、源氏物語の第13帖「明石の巻」に登場する場所やモノに見立てられた名所が数々存在します。例えば、明石入道浜の館になぞらえた「善楽寺」にある“明石入道の碑”や、光源氏が明石の上に会いに行くために通った道とした「蔦の細道」(無量光寺内)などです。
これらは、文学に通じていたとされる明石藩の第五代藩主・松平忠国が、文学遺跡として江戸時代に創り上げました。
そんな忠国について知ることのできる企画展「明石藩の世界Ⅻ―藩主忠国が創った『源氏物語』遺跡と俳諧文学―」が、明石市立文化博物館で10月14日(月・祝)まで開かれています。
この展覧会では、忠国の人物像や関連資料を展示するほか、江戸時代の源氏物語受容、松尾芭蕉をはじめとする、明石を訪れた多くの俳人が盛り上げた俳諧文学など、明石からみた江戸時代の文学事情もひも解きます。
明石市文化・スポーツ室歴史文化財担当の濵室かの子さんは、「今展では、丹波篠山市教育委員会所蔵の『源氏物語絵巻』明石の巻3巻を借用し、展示します。江戸時代に描かれたもので、大変美しく細かな描写で描かれています。『明石』の場面を明石の地で見ることのできる貴重な機会となっております」と見どころを語りました。
同展ではさらに、江戸時代の人たちの生活や文化に、源氏物語がどのように影響したかについても紹介します。女子教育の教科書や、江戸時代には『偐紫田舎源氏』など絵入りの小説・草双紙の題材になったほか、その流行にともない「源氏絵」と呼ばれる浮世絵もたくさん描かれたのだとか。