寒さを感じると肌にポツポツが出てくる現象「鳥肌」。毛をむしったあとの鶏の皮膚にあるような粒々が肌にできることからそう名付けられています。感動した時や恐怖を感じた時にも立つ鳥肌ですが、いったい何のために起こるのでしょうか。“鳥肌研究”の第一人者である、早稲田大学の片平建史准教授に話を聞きました。
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【鳥肌が立つ原理】
片平准教授は「皮膚の下にある立毛筋という小さな筋肉が収縮することにより毛が立ち上がると毛穴周辺の皮膚も持ち上がります。これが肌上でポツポツになって見えるのが鳥肌です。筋肉には自身の意志で動かせるものと、動かせないものがありますが、この立毛筋は後者で、体を活発にしようと勝手に働く交感神経によってその活動が制御されます」と説明。
【鳥肌が立つ部位】
腕や太ももなどで感じる方が多いと思いますが、片山准教授によると「見えにくいですが、顔面でも鳥肌を計測することができます。また、頭皮でも鳥肌が立つことがわかっていて、鳥肌が立った際に髪の毛が数ミリ浮き上がるといった現象が起こることも研究でわかっています」とのことです。
【鳥肌が立つ理由】
「原理」はほぼ解明されているという一方で、「理由」についてはまだまだわからないことが多いようです。「まず寒い時に起こる理由についてですが、動物は毛を立てることで皮膚周辺に空気を保持して断熱効果を得ています。ただ、人間は体毛が退化しており寒さをしのぐなど効果はあまり期待できません」と片平准教授。意味がないにも関わらず、なぜまだその機能が人間に備わっているのかはまだ解明されていないとのことでした。
【鳥肌は動物の本能?】
怖い思いをした時や、怒りによっても鳥肌が立つことがあります。これについて片平准教授は「身の危険を感じたときに毛を逆立てることで、体を大きく見せるという動物の防衛反応を受け継いだものという考え方があります」と解説。しかしながら、音楽や映画で感動した時のように「ポジティブな感情体験」で起きる鳥肌については、理由やメカニズムがまだよくわかっていないのだとか。
どのような感情であれ、副交感神経が生理的な覚醒状態のピークに達した際に鳥肌が起こる.....という考え方はあるとしつつも、“ひらめきの瞬間”など、認知的な活動における鳥肌のメカニズムについては前述の理屈では説明できないと片平准教授は言います。
「鳥肌の立つ音楽を調査した研究者がいました。その際に、ある音楽の音響的特徴が一部の動物の子供が親から離れた際に発する鳴き声『セパレーションコール』に似ているという結果を発見しています。しかしながら、やはりそれも感動のようなポジティブな体験で鳥肌が立つ理由が説明できません。このように、片方の理由は説明ができても、もう一方の理由は説明がつかないといったケースが多いのです」(片平准教授)
解明が進まない理由のひとつには、研究の難しさもあるようです。