でも、結果を出せたとしても、それはただの自己満足で、「技術あるよ、すごいね」と褒められて自信がつくのみ。それが工料に反映されることは少ないのです。
当たり前ですが、呉服屋さんはお客様の方を向いて商売をするので、たやすく工賃をあげてはくれません。お客様は安い方が嬉しいですよね。一方、職人は仕事をもらっている立場から、なかなか交渉できないんです。
工料アップについては、三方(売る人、着る人、仕立てる人)の意識改革が不可欠だと強く思います。これがなかなか難しいのですが、皆さんに、和裁職人の現状を知ってもらうためにXで時々呟いています。
今後、何ができるかわからないけれど、こうして取材してもらえただけでも、Xをやっていた甲斐がありました!母の服のおかげですね!あれ、また母に感謝しないといけない(笑)」
和裁職人の未来のためにと奮起し、東京キモノショー2024(主催:一般社団法人きものの未来協議会)のガイドブックに職人の賛同者を募って広告を出したり、自身のnoteに職人紹介のページを作ったりと、活動の輪を広げている宮西さん。
「これからの和裁職人が食べていけるよう、少し先をいく私はお仕立て代を上げる努力をしていこうと思っています。お客様には着物を気軽に楽しめる価格でなくなってしまうため、大変心苦しい…。それでも、依頼してよかったと思っていただける仕事をするしかないです。和裁の技術を、途絶えさせないように、細々と。これが、和裁の未来のために、私ができること。」と締めくくりました。
【宮西千晴さん関連情報】
■X(@KimonoNuibito)
■Instagram(@chiharumiyanishi)
■note(桃色の月うさぎ(香川県 一級和裁技能士:宮西千晴))
■YouTubeチャンネル『KimonoNuibito』
(取材・文=五ヶ瀬あお)