久しぶりにお気に入りのスニーカーを出して履こうとしたらソール(靴底)がボロボロになっていた.....アッパーが変色していた...など、大切に保管していたにもかかわらず悲しい経験をしたという人は多いのではないでしょうか? スニーカーが劣化してしまう原因と防止策ついて、コンフォートシューズブランド“Re:getA”を展開する『株式会社リゲッタ』の品質管理部リーダー・一木昇一さんに話を聞きました。
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一木さんによると、スニーカーの劣化は「加水分解」と呼ばれる現象が原因なのだそう。
「加水分解とは、物質が水と反応して分解される化学反応のこと。空気中の水分や紫外線・熱などの影響を受けて起こる経年劣化です。スニーカーのソールには主にポリウレタンが使用されますが、加水分解が起こりやす素材なのです。耐久性が高く柔軟な性質を持っている一方で、水に弱く時間が経つと空気中の水分を吸収し内部から分解されてしまいます。『ベタついている』『乾ききったスポンジのようになり表面がモロモロしている』などの症状は加水分解が進行しているサイン。その状態でスニーカーを履くとソールがひび割れたり剥がれてしまい、最終的に使用不可能となります」(一木さん)
「履いているかどうかに関わらず加水分解は起こるりうる」と一木さん。使用頻度よりも“スニーカーが置かれている環境”が関係しているといいます。
「空気中の湿度や温度によって加水分解は進行します。一般的にスニーカーの寿命は約3~5年が目安とされており、素材・使用頻度・保管状態など様々な要因によって大きく異なりますがポリウレタンなどの加水分解を起こしやすい素材を使用している場合、寿命は短くなる傾向があります」(一木さん)
加水分解を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
一木さんは「完全に防ぐことはできない」としつつも、“履き方”や“使用後のメンテナンス”で加水分解の発生を大きく遅らせることができると話します。
【スニーカーの履き方】
●1日履いたスニーカーは2~3日ほど休ませ、十分に乾燥させる.....毎日同じスニーカーを履くとソールの消耗を早めるうえ、乾燥させ切ることができず劣化が早まります。
●適度に使用すること.....履くことでソールに含まれた水分が外に押し出されるため、加水分解を遅らせることができます。
●定期的に防水スプレーを使用し履く
【使用後のスニーカーの扱い方】
●履いたあとは汗や汚れを軽く拭き、風通しの良い場所で保管。
●劣化を早めてしまうので、炎天下の車内に放置したり濡れたまま放っておかない。
●濡れた場合は、新聞紙やキッチンペーパーを隙間なく詰めて水気をとる。
●湿気防止に靴用除湿剤やシリカゲルなどの乾燥剤を使用する。
●湿気を吸収する効果を持つ木製のシューキーパーを使用する。
「加水分解を防ぐ」というよりも「靴の寿命の長さ」を考えるなら、ポリウレタンに比べて水に強く加水分解が起こりにくい天然ゴムや合成ゴムがソールに使用されているものや、革・キャンバス地といった天然素材を選ぶことも一つの方法とのことでした。
さて「これだけは絶対に長く履きたい!」というスニーカーがある場合、“最強の保存方法”があると一木さん。それは「真空パック保存」なのだとか。スニーカーを空気に触れさせなければ加水分解は起こらないため、効果は絶大だそう。
【真空パック保存のやり方】
〈1〉圧縮袋・シューキーパー・シリカゲルを用意。
〈2〉1日以上自然乾燥させたスニーカーにシューキーパーを入れる
〈3〉圧縮袋にシリカゲル乾燥剤を入れて、スニーカーを入れる
〈4〉掃除機で中の空気を抜き圧縮し、スニーカーが入っていた箱などに入れて保管
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取材の最後に一木さんは、「靴は、いつかは必ず寿命がきてしまうもの。ですが、愛着のあるスニーカーはなるべく長く使えるよう大切にお手入れしていただきたいと思います」と話していました。
(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2024年12月17日放送回より