北朝鮮によって1983(昭和58)年、当時23歳で拉致された神戸市長田区の有本恵子さんの父親、明弘さんが、2月14日、老衰のため死去した。96歳。
すでに葬儀と告別式を終えている。

恵子さんはロンドンでの留学を終えてヨーロッパを旅行中の1983(昭和58)年に消息を絶った。“よど号ハイジャック事件”のメンバーらによってデンマークのコペンハーゲンに誘い出され、そこから北朝鮮へ拉致されたとされる。
明弘さんは妻の嘉代子さんとともに、外務省や警察庁などに何度も足を運び、安否確認を求め続け、2002年3月に政府に拉致被害者と認定された。
北朝鮮政府は、同年9月17日の日朝首脳会談後に、「恵子さんは1985年12月に同じ拉致被害者の石岡亨さんと結婚、翌年娘を生んだが、1988年11月4日にガス中毒で子どもを含む家族全員が死亡した」と説明。
しかし、それを裏付ける証拠はなかった。
日本人拉致被害者に関しては、この時、蓮池薫さんら5人が帰国したが、2002年以降、新たな帰国者がおらず進展がない。

当時を振り返った明弘さんは、ラジオ関西の取材に対し、「恵子が死亡したという情報は非常に不確かで信用できない。それならば、娘を生き返らせるために闘うことにした。それが取り戻すということだ」と訴えた。
嘉代子さんは2020年2月に亡くなり、同年6月には拉致被害者、横田めぐみさん(失踪当時13歳)の父、滋さん(享年87歳)が亡くなった。拉致被害者の親世代で健在なのは、めぐみさんの母・早紀江さん(89)だけになった。
明弘さんと嘉代子さんは、恵子さんとの再会を果たせなかった。


