“沼”にハマった人々の足跡、図鑑に載った標本、謎の採集道具も 大阪市立自然史博物館「貝に沼る」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

“沼”にハマった人々の足跡、図鑑に載った標本、謎の採集道具も 大阪市立自然史博物館「貝に沼る」

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 平瀬ばかりでなく、貝にハマった人たちの多くが、別に職業を持っていたアマチュア研究家であることが興味深い。古くは造り酒屋や両替商など、20世紀以降になると、学校に勤務する先生が貝類学を大きくけん引した。その代表格である吉良哲明(きら・てつあき、1888~1965年)は1954(昭和29)年、保育社から出版された「原色日本貝類図鑑」の執筆と編集を担当。掲載した写真の被写体は、えり抜きの美しい標本ばかりで、そのほとんどが自前のコレクションだったというからすさまじい。各学校の図書館などに置かれた同図鑑は、その完成度の高さによって多くの読者を貝の沼に引きずり込んだ。実際に撮影に使われた標本を探し出して図版の通りに並べた“実物図鑑”も見どころ。

「原色日本貝類図鑑」図版の写真(上)で使われた標本がそのまま並ぶ(下)

 展示の後半、「標本を作る、保存する」のコーナーには、貝の肉を抜く専用の大鍋(調理用に使う鍋と区別するためか、側面に「貝」とマジックで大書)や壮観としか言いようがないコレクターの引き出しなどを陳列。さらに沼の住人らが採集に使う、植木鉢や出刃包丁などのさまざまな謎の道具類を本人たちの写真付きで並べている。CTやDNA解析などを用いた最新の研究方法、外来生物問題、市民参加型の調査の展示を経て、最終章「キミも沼ろう」では地域の研究サークルや談話会、貝類の研究ができる大学を紹介。気付けば目前に沼の入り口がぽっかり開いていた―という順路だ。

たとう紙に種名を書いて包まれた貝のコレクション。江戸時代のものである可能性がある
現代コレクターの引き出し
出刃包丁、スパチュラ、ペットボトル…沼の住人たちが貝の採集に使う、謎の道具類
「スーパーの鮮魚コーナーは貝類学の入口」(石田学芸員)。同学芸員が自ら購入、おいしく味わったさまざまな貝

 石田学芸員は「貝の魅力は、その多様性と殻の美しさ。展覧会では気楽な気持ちで現物を見てもらい、古い時代と新しい時代の研究資料を見比べてほしい」と話した。

◆特別展「貝に沼る―日本の貝類学研究300年史―」
会場 大阪市立自然史博物館 ネイチャーホール(花と緑と自然の情報センター2階)
(〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23[長居公園内])
日程 2025年2月22日(土)~5月6日(火・振休)
時間 9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜日(ただし、月曜日が休日の場合はその翌平日)
観覧料 大人500円、高大生300円
問い合わせ 同館06-6697-6221

特別展「貝に沼る―日本の貝類学研究300年史―」HP

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