女優の岸本加世子さんが、シンガーソングライターの川嶋あいさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『明日への扉〜いのちのラジオ+〜』(ラジオ関西)に出演。芸能界での貴重な経験や美空ひばりさんとの深い絆、人生の困難を乗り越えるための信念について語りました。

岸本さんは、女優としてテレビドラマ、映画に出演するほか、歌手活動など幅広いジャンルで活躍。日本アカデミー賞では、新人賞や最優秀助演女優賞をはじめとした数々の名誉ある賞を受賞してきました。
岸本さんの芸能界入りは、スカウトをきっかけに決まりました。
「久世光彦さんという、本当に厳しい演出家の方の番組でデビューすることに決まったんです。共演者が大ベテランばかりのところに、いきなりポツンと突っ込まれて。久世さんが厳しくすればするほど周りの方がかわいがってくださるので、ある意味、久世さんの親心だったのかな」と、デビュー当時の思い出を語るとともに、恩師の厳しさに感謝していると振り返りました。
自身の芸能活動のなかでも印象深い出会いとして紹介したのは、向田邦子さんとのエピソード。
久世さんが沢田研二さん主演のドラマ『源氏物語』のキャスティングを進めるなかで、岸本さんは「小侍従」という役にキャスティングされました。この脚本が向田邦子さんによるもので、キャスティングを見た向田さんは「この岸本加世子って子は小賢しいから嫌い」と話したそうです。
これを聞いた久世さんは、岸本さんに「向田さんは『お前は嫌だ』と言ってる。でも、『ほかの女優さんのスケジュールが埋まってて岸本しか空いてないんですよ』と言っておいたから、覚悟してやれよ」と告げたといいます。
その後、向田さんとの初めての顔合わせの際、岸本さんは緊張しながらも挨拶をしました。すると、向田さんは岸本さんの肩を抱き、手をさすりながら「よろしくお願いします。会いたかったわ」と優しく声をかけてくれたのだとか。
「あれ? 嫌われているはずなのに」と驚いた岸本さん。いまでもその真相はわからないとのことですが、同作への出演後、向田さんの少女時代を描いたドラマ『あ・うん』、続編の『続あ・うん』にも出演。岸本さんにとって、向田さんとの出会いは非常に大きなものであったといいます。
岸本さんは、美空ひばりさんとの親交についても触れました。あるとき、先輩とともに訪れたひばりさんの公演で挨拶をすることになったそうで、「美空ひばりさんなんて、私たちの業界ではお会いすることすら考えられないぐらいの方なので緊張しました」と、当時を思い返しました。
公演から1週間が経ったころ、「ひばりさんの家で水炊きをするから食べに来ませんか」との声がかかり、2人きりで食事をすることになったのだそう。そのときの心境について、岸本さんはこのように語りました。
「ひばりさんと2人っきりなんですよ。ひばりさんは、私の緊張をいかに和らげてやるかということに心を砕いてくださって、『今日からお姉ちゃんって呼ばないと返事しないからね』と言ってくれました」(岸本さん)
その後も、ひばりさんからは「いまからディズニーランドに行かない?」「舞台行かない?」と頻繁に連絡がきたそうで、「気がついたら週3~4日でひばりさんの家に入りびたっていた」と、ひばりさんとの親しい関係を懐かしみました。