「フランス統治時代に始まったコーヒーの栽培により、カフェ文化が盛んになったと言われています。ベトナム語でコーヒーを意味する『カ・フェー』はフランス語の『カフェ』が由来であることからも、統治の影響が垣間見えます」(ベトナム料理研究所)
ベトナムにおけるコーヒー栽培の歴史背景には、17〜18世紀にかけてフランス・オランダ・ポルトガルなどから訪れた宣教師達の存在がありました。布教と共に、彼らが持ち込んだもののひとつがコーヒーだったのです。19世紀になり、ベトナムがフランス領になるとコーヒーは大量栽培されるように。2023年に発表された「世界のコーヒー豆生産量ランキング」では、なんと2位にランクイン。実は、ブラジルに次ぐコーヒー大国なのです。

ベトナムではコーヒーの淹れ方にも特徴があるのだとか。
「ピン・ファー・カフェーという、ステンレスやアルミでできた金属製のフィルターを使ってコーヒーを淹れます。かつてフランスでも使われていた道具ですが次第に使われなくなったそうで、ベトナムのそれは当時の名残りとも言えますね。とはいえ都心部ではコーヒーメーカーやエスプレッソマシーンが普及し、今や珍しい淹れ方になりつつあります」(ベトナム料理研究所)

抽出したコーヒーは、コンデンスミルクを加えて飲むのがベトナム・スタイル。「ベトナムコーヒー」と呼ばれていますが、最近ではコーヒー以外のドリンクやサイドメニューにおける進化やトレンド変化が相次いでいる模様。果物などがトッピングされたデザートドリンク、健康志向派のために甘さを控えたメニューも登場しているようです。
「カフェの在り方」にも変化が。都会では古いアパートメントや一軒家にデザイン性をもたせたリノベーションをすることで、空間や雰囲気を重視する店が増えてきたとのこと。また、生のパフォーマンスを楽しめる「音楽カフェ」や洞窟を再現したカフェに端を発し、カピバラと触れ合えるカフェ、座りながらやアーチェリーで遊べるカフェなど“コンセプト”を際立たせた店が続々生まれているそう。
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今回の取材で、ベトナムの人々の“カフェ愛”を知ることができました。今後、どんなカフェが新たに生まれるのか目が離せません。
(取材・文=つちだ四郎)