「ワイングラスは乾杯のとき“チン”と合わせて(ぶつけて)ははいけない」というマナーがあることを、筆者は最近知りました。
ワインの味や香りを最大限に引き出すために薄く繊細に作られていることから、ぶつけると「割れる可能性がある」という理由なのだとか。そのため、ワイングラスでの乾杯の際は、「目の高さ程度までグラスを持ち上げるだけに留める」というのが推奨されています。

ワインの場合はさておき、そもそも乾杯の際にグラスを合わせるのはなぜなのでしょうか。由来やマナーについて和文化研究家の三浦康子さんに聞きました。

☆☆☆☆
三浦さんは「諸説ある」とした上で、乾杯の由来や意味について話します。
「もともと神様への祈りを込める宗教的な儀式が乾杯の始まりであり、グラスを合わせるものではなかったようです。グラス同士をぶつけるという習慣の起こりは古代ギリシャ時代。悪魔払いのために行われていました。これが中世ヨーロッパ時代には『毒殺を防ぐため』のものに変化したとのこと。気が緩みがちな酒の席で毒を用いた暗殺が多くあったこの時代、グラスをぶつけ合い飛んだ飲み物のしぶきが互いのグラスに入り、それを口にすることで毒が盛られていないかどうかを確認したといいます。そこからグラスを合わせる行為は『信頼し合っている』という意思表示として、世に広まっていったと考えられています」(三浦さん)

現代では、労いや祝いの席などで行うことの多い乾杯。気をつけるべきマナーなどはあるのでしょうか。三浦さんに教えてもらいました。