鉄鋼大手・神戸製鋼所(本社・神戸市中央区)が敷地内で増設した石炭火力発電所2基について、大気汚染や地球温暖化の恐れがあるとして周辺住民が稼働差し止めなどを求めた訴訟の控訴審で、一審に続き請求を退けられた原告らが上告を断念したことが1日、関係者への取材でわかった。

弁護団は、「慎重に議論を尽くしたうえでの結論。気候変動問題を司法の場に投げかけた意義は大きい」としている。
一審・神戸地裁判決(2023年3月)は、一般論として石炭火力発電所が排出するCO2が、気候変動に悪影響を与えるなどの危険性は認めたものの、「実際に生命、身体、健康を害されるほどの被害に遭うか否かは、様々な不確定要素に左右され、被害を回避するために国内外で地球温暖化対策が進められている」と指摘、住民の生命、身体に具体的な危険は認められないとした。
二審・大阪高裁判決(2025年4月)はこれを踏まえ、原告に生じる恐れのある被害と今回の発電所との因果関係は極めて希薄だとした。

弁護団は、「気候変動という新しい形の人権侵害に対して、積極的に人権保護の役割を果たそうとする判決が世界では相次いでいるが、裁判所は、公害訴訟の伝統的な法的枠組みに依拠している」とコメント。





