高遠さんの言葉を受け、平田さんはこのように解説した。
「生徒には、授業の最初に『“福島頑張ってます”みたいな劇は絶対に作らなくていいからね』と伝えていた。だから、大人はそういうエピソードを一生懸命言ってくれるけど、ちっとも採用されない(笑)。そんな視点で彼らが拾ってきたエピソードが、“リアル”だったんです」(平田さん)
その後、高遠さんの活動の焦点は子どもたちへの教育支援や元少年兵の社会復帰支援へと移行し、2019年には一般社団法人ピースセルプロジェクトを設立。小学校での図書館支援からスタートし、現在は、絵本を通じた教育活動や大学での平和教育カリキュラムの開発に取り組んでいる。
学校が不足し、限られた授業時間に組まれるカリキュラムからは、おのずと“副教科”がカットされる。そのため、学校図書館や書店にも絵本がないという状況からのスタートだったが、日本の絵本を使って授業をしたところ、言語の壁を越えて子どもたちは大爆笑。集中力も増すという予想外の反応もみられ、絵本の読み聞かせは活動の軸になっている。
いま深刻なのは、過激な思想教育を受けた元少年兵のケア。社会が彼らを恐れるというよりも、社会経験のない元子ども兵が「村に帰りたくても復讐されるのでは」と恐れているという。
「現在、私がいるドホークは比較的安全といわれていますが、かっこ付きの平時なんです。紛争予防、平和構築は平時でなければできない。目下、イラク・ドホーク大学にある平和人権学科の学生向けに演劇的手法を用いたワークショップファシリテーター資格制度の確立に取り組んでいます」(高遠さん)

※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2025年5月8日放送回より
●ピースセルプロジェクトを通じた支援方法についての問い合わせ
【一般社団法人ピースセルプロジェクト】公式ホームページ
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『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 12:30~12:54
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
メール:oriza@jocr.jp
『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。





