開幕後、にぎわいが続く大阪・関西万博。そこに、地元の大阪・八尾から、ペットの健康や介護をテーマに製品開発を行う企業が、6月の1週間、期間限定で出展を果たすことになりました。ペット関連の出展は、万博では希少なこと。そのいきさつや思いについて、企業の代表に聞きました。
「これは展示会だと思って受けてはだめだ」。大阪・関西万博への出展を打診されたとき、株式会社プラストの代表、加藤優さんはそう確信したそう。「万博とは何か」を自ら探求し、たどり着いたのは、「未来を示す場」という原点。そこに営利目的ではない意義を見いだしたことで、多くの希望者の中からペット関連では数社のみという出展を実現することができたといいます。
トヨタ出身の加藤さんは、独立後に「愛犬の健康を願って」ペットフード業界へ参入。一般的なフードでは改善できなかった愛犬の体調を、自らの食事研究で好転させた経験から、“手作りドッグフード”という誰もやっていなかった道を選びました。
途中、幾度も経営危機はあったそうですが、「もう進むしかない」という覚悟で乗り切ると、コロナ禍で営業ができない状況のなかでもSNSで広がったクチコミが「魔法のごはん」と呼ばれ、事業は急成長。「食べることは生きること」「自社のごはんだけが売れてほしいと思っていない。価値観がガラッと変わるような世の中にしたい」と述べる先には、加藤さんや同社の、生命を重んじる思いがありました。


フードのみならず「ペットのすべてをサポートする」メーカーを目指す同社。万博出展に向けては、新たに高齢犬の介護を支える滑りにくいマットを開発し、国内外から集う来場者に披露します。「人間同様、ワンちゃんも高齢化が進み、介護で悩まれている方が多い。立てなくなると、ごはんを食べるときにのどを詰めやすくなってしまう。食べる喜びがなくなると、衰退が早くなるもの。犬も人間と同じように、歩ける時間が寿命に直結する。正しい歩き方ができるマットを通じて、ワンちゃんをサポートしたい」(加藤さん)。


万博への出展を決めた動機のひとつには、従業員たちへの誇りの提供があったと、加藤さん。「“犬のエサの会社”じゃなく、“万博に出る会社”だと胸を張って言えるようにしたかった」。名刺には全員「EXPO2025」のロゴが入り、会社のZoom背景も万博仕様に。取引先や関係者との話題づくりにも役立っているそうです。


とはいえ、「出展自体に満足しているわけではない。これをきっかけに、どんな未来を広げていけるか。大事なのはそこ」と、加藤さん。今回の万博では、ペットに関して先進国である欧米を含め、多くの訪日客もやってきますが、「命を大切にする日本ならではの“家族としてのペット文化”を伝えたい」と意気込みます。