老祥記のような豚饅専門店ではなくても、神戸には戦前派だと新開地の「春陽軒」、戦後派だと三宮の「太平閣」「三宮一貫楼」、元町の「四興楼」などの有名な老舗豚饅どころがある(「春陽軒」と「太平閣」は、もともと中華料理店)。

2011年からは老祥記・四興楼・三宮一貫楼が発起人となって、毎年「KOBE豚饅サミット」も開催している。
そのほか、灘区の「ぶたまんや」や長田区の「南京楼」などなど、市内には各店ならではの豚饅が食べられる専門店や中華料理店は多々ある。
余談だが、わが家の近くの兵庫区・平野商店街にある「中央ベーカリー(ラ・セントレ)」では、1958年からパン屋が作るパン酵母を使った豚饅を販売していた。残念ながら3年前に製造をやめてしまったが、地元の名物豚饅として愛されていた。
にもかかわらず、対外的にも「神戸といえば豚饅」というイメージが今一つ無いのでは。徳島県に住む僕の知人は、神戸に来ているにもかかわらず土産には「551蓬莱」の豚饅を買って帰るのだ。やはり、関西では「551蓬莱」一強なのか?

北区出身の落語家・桂天吾君とも意見が一致したのは、神戸っ子は「自分たちが地元でおいしいものを食べて満足すればそれでいい」のであって、対内的にはPRしても、わざわざ対外的にまでPRしないのではないかということだ。要するに「内輪で満足する」のである。豚饅も手土産などではなく、地域に密着した市場で買い物するような“日常的に食するもの”なのだろう。
「551蓬莱」の“一強”に対抗するわけではないが、神戸を「豚饅の街」として全国的に売り出すのも“一興”では?
(文=サブカル郷土史家 佐々木孝昌)
※ラジオ関西Podcast『神戸放談』#10「神戸は豚饅王国である」より




