永世舎の作品群です。欧米向けに作られた室内を飾るための花瓶は、一対で作られたものが多いです。《色絵金彩蓮池水禽図珈琲器》は5点セットのコーヒーカップ。手前に大きく蓮を配置し、遠くに風景を描いて遠近感を持たせた構図は、当時流行していたジャポニスムの要素を取り入れたものと考えられます。
北儀右衛門《赤絵金彩鶴図紅茶器》も5点セット。こちらはティーカップで、九谷焼(石川)の作風にならった赤絵製品です。素地は、美濃方面から取り寄せたものと思われます。司山《色絵金彩図替花瓶(一対)》は、薩摩焼にならった神戸絵付です。花鳥図や婦人図などは、日本らしい図案として盛んに描き入れられました。




いずれの作品も、制作から100年前後も経過したとは思えないほど端正な姿を保っています。ぜひ、新緑の美しい夏の丹波篠山の風景とともに、色鮮やかな明治陶芸の美をお楽しみください。
(兵庫陶芸美術館学芸員・村上ふみ)
◆開館20周年記念特別展「博覧会の時代 HYOGO発、明治の輸出陶磁」
会場 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4)
会期 2025年8月24日(日)まで
開館時間 10:00~17:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館 月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料 一般700円、大学生600円、高校生以下無料
電話 079-597-3961(代表)、FAX 079-597-3967





