梅雨の時期に咲くことから、雨の似合う花として親しまれている「アジサイ」。 青や紫などの美しい色付きは、実は「土」によって変化することを知っていますか? 確実園園芸場(茨城県牛久市)4代目園主・川原田邦彦さんに詳しく聞きました。

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「アジサイの持つ色味である赤と青は土のPh(ピーエイチ)によって変わります。土が酸性にかたよると、土中のアルミニウムが溶け、それを植物が吸って青くなります。逆にアルカリ性だとアルミニウムが溶けないため赤やピンクになります」(川原田さん)
川原田さんによると、土壌の酸性度によってアジサイは赤〜紫〜青に色づくのだとか。日本の公園などで目にするアジサイに青や紫が多いのは、土壌のほとんどが酸性雨によって若干酸性に傾くからなのだそうです。
一方、海外ではアジサイは“赤”のイメージを持たれているそう。「ヨーロッパでは東洋のバラと言われることも。向こうでは土がアルカリ性だったため赤色の印象が強いのでしょう」と川原田さんは説明しました。
さて、今や鉢植えやガーデニングの季節モノとして定番のアジサイですが、古くは「嫌われ者」だったとか。
「人気が出てきたのはここ30年から35年くらいですね。嫌がられた理由は2つあって、まずは『花びらの数が4枚』ということ。日本において4は“死”を意味する不吉な数字という考え方がありました。もうひとつは『色が変わる』こと。変化を嫌う当時の日本人はこれを好みませんでした。その証拠に、江戸時代は園芸の書物が数多く出版されているのですが、アジサイに関する書物は全くと言っていいほど存在しません」(川原田さん)
ちなみにアジサイは漢字で「紫陽花」と書きますが、これにも意外な事実があることが判明。川原田さんによると、「紫陽花という漢字は中国から入ってきたもので、実は中国の全く別の植物を表しているのです。間違った情報が日本に伝わったまま今に至ります」とのこと。
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現在、日本に存在するアジサイは品種改良されたものも含め2500~3000種にのぼるといいます。知識を持ったうえで改めてじっくり眺めると、新たな魅力を発見できるかもしれませんね。
(取材・文=堀田将生)



