
河瀬監督は、「地球規模で考えれば、“同じ船”に乗っているのに、世界の至るところに分断がある。分断や対立は、お互いが正義だと思っていて、それをジャッジできない状態。“会話”と“対話”は違う。対話はしっかりと相手に向き合うことだ」と話す。
太平洋戦争が終結して80年の今年、世界ではロシアによるウクライナ軍事侵攻が続き、イスラエルの イラン攻撃が激化する状況に触れ、「だからこそ、向き合って対話する気持ちを持たなければ。分断をつながりに変えるために」と訴えた。

河瀬監督は万博プロデューサーとして、6月1日に開かれたパレスチナのナショナルデーセレモニーに出席した。イスラエル人の映画監督が、紛争で家族を失ったパレスチナ人どうしの会話を撮った映画のシーンが流れた。忘れられないのは「私たちが流す涙の色は一緒」という言葉。それは、「国は違えど、同じ人間として一緒」という意味合いだった。
セッションには、お笑いコンビ・ココリコの田中直樹さんも加わった。田中さんは日常から環境問題に強い関心を持ち、さまざまなメッセージを発信している。
「3年ぶりに行った東日本大震災の被災地・南三陸町(宮城県)で、『海水温が6度上がった』と聞いて驚いた。養殖している特産のホヤがの多くが死滅していることに落胆したという。
そのうえで、「(環境問題のみならず、社会課題について)声を上げることは大事。そうしないと何も始まらない。パビリオンでは対話を重んじるので、腹を割った話ができる。わずかな時間で距離を近づけることができる。会話と対話の違いはそこなのかも知れない」と話した。

セッションに参加した神戸市の40代の女性は、「対話」にこだわる河瀨監督の思いに惹かれ、パビリオンを事前予約していた。雑踏、喧騒の中、移築された校舎を使ったパビリオンでセミが鳴いているのに驚いた。そして、「『私たちが流す涙の色は一緒なのに、なぜ世界の人々は、さまざまな形で追い詰められるのだろう』という言葉が忘れられない」と話した。
※「瀬」は「刀」の下に「貝」







