平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、「芸術文化観光専門職大学(以下、CAT)」(兵庫・豊岡市)に今春より着任した講師・鎌田麻衣子さんが出演。
これまで、演劇未経験な学生らに演劇的手法を用いた指導を実践してきた鎌田さんが、演劇との出会いから、東京と豊岡の2拠点生活について語った。
鎌田さんは、静岡県藤枝市出身。中学3年生のときに高校生が演じる舞台を目にし、その瞬間から演劇の魅力に取りつかれた。高校では演劇部に在籍。その後、より専門的に演劇を学ぼうと、演劇教育の名門・玉川大学に進学した。
玉川大学で演劇教育を学んだ鎌田さんの原点は、「演劇を通じて多くの人を幸せにしたい」という揺るぎない信念だ。平田オリザさんの著作『芸術立国論』にも大いに影響を受けた。
就職氷河期という厳しい時代背景のなか、自らワークショップを立ち上げ、独自の教育的アプローチを模索した。その縁から、公立高校や私立高校で演劇活動を行うようになった。
「最初は結構大変で、『ゲームをやろう』と言っても丸くなれなかったり、『歩いて』と言っても歩かなかったりしました。どうしたら楽しく参加できるようになるのかを考えながら、いろいろな手を使って、みんなが楽しく演劇に触れられるようにしていました。学校のなかでだんだん演劇の授業の文化ができて、先輩の『楽しかった』という口コミで広がっていきました」(鎌田さん)
17年間の非常勤講師経験は、まさに彼女の情熱と実践力の証である。
その後、東京学芸大学や群馬大学医学部でも指導。群馬大学医学部では、必修科目として演劇未経験である120人の医学部学生を4つのグループに分け、講義とデモンストレーション、実践を組み合わせた授業をチームで実践。
こうした授業スタイルは単なる技術習得ではなく、人間性の涵養(かんよう)を目指すものだった。多忙を極める医学生にとっても、息抜きをしながらチームビルディングを体得する機会となっていたようだ。
この春から、平田さんが学長を務めるCATに着任。現在は、大学生が演劇を経験することの意義について研究を深めている。
「『演劇を通して社会を良くしたい』という思いを持った学生たちが集まっていて、それに感動しました。演劇のこと、観光のこと、そしてその間をつなぐ人間になるという目標を持った学生たちと一緒に学べることが楽しみです」(鎌田さん)






