「かつて材木を運ぶだけの森林鉄道が、今は人々の笑顔を運ぶ乗り物として生まれ変わった」。そんな素敵な物語が兵庫県宍粟市波賀町で産まれました。同町にかつて存在した「波賀森林鉄道」が、地元ボランティアの手で蘇ったのです。多くの人々の想いと努力によって復活を遂げた同鉄道が走る、複合リゾート施設「フォレストステーション波賀」の支配人・小林明宏さんに詳しく話を聞きました。

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復活劇の要となったのは「波賀元気づくりネットワーク協議会」を中心とした地元ボランティアのメンバーです。周辺のシャクナゲ園には「シャクナゲを咲かそう会」が約1300本ものシャクナゲを植樹。春には色とりどりの花が見事に咲き誇ります。
長らく周遊わずか108mだったコースは、100周年を迎えた2024年10月26日に念願の総延長678mへと拡張が完全。復活の節目となったのが、同月に行われた完成式典。小さな子どもから高齢者まで多くの来場者で賑わい、会場は喜びに包まれました。その後鉄道は定期運行を開始。「降りてこられた皆さんが『楽しかった!』と言ってくださるのが嬉しいです」と小林さん。整備は地元有志のボランティアによって進められ、乗車料金は今後の施設整備(トイレや照明の設置など)にも活用される予定。地域と鉄道の未来を支える、貴重な資金となっています。

さらに注目したいのは、教育の場としての活用です。例えば、自然学校で訪れた子どもたちは、ただ乗車を楽しむだけでなく、森林鉄道の歴史や役割を学んだうえで体験に臨みます。自然と産業のつながりを感じられる、貴重な学びの場にもなっているのです。

ことし5月には「東山シャクナゲ祭り」と合わせて大規模な運行も実施され、230名近くが次々と乗車する盛況ぶりでした。標高678mの自然豊かな環境で、家族連れや鉄道ファンたちが列車の旅を満喫しました。
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こうした活動の根底にあるのは、「地域を盛り上げたい」「子どもたちに誇れるふるさとを残したい」という住民たちの熱い想い。訪れる人にとっては観光地でも、地元の人々にとっては“日々育てている宝物”にほかなりません。そうした場所にはどこか温もりがあり、だからこそ何度も足を運びたくなるのかもしれません。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「谷五郎の笑って暮らそう」2025年6月22日放送分より




