いざ、時空を超えた旅へ。紀元前からの世界の民族・考古資料と仏教美術が一堂に会する特別展「世界探検の旅―美と驚異の遺産―」が奈良国立博物館(奈良市)で開かれている。ユーラシア大陸の東西文明の交流や世界各地の信仰など、人類の歩みを貴重な品々でたどる壮大なスケールの展覧会だ。9月23日(火・祝)まで。

今展では「天理大学附属天理参考館」(奈良県天理市)のコレクションに奈良国立博物館の仏教美術品を加えた約220件を紹介。そのうち、インカ帝国の「金製頭飾 人面形」(15〜16世紀、ボリビア[推定])など12件は初めて公開された。天理参考館は1930年設立の民族・考古博物館で、世界各地から集めた約30万点にのぼる膨大な収蔵品を誇る。

展示は3部構成。第1章「文明の交差する世界」では、約4000年前、メソポタミア文明の中心地だったシュメールの王の彫像「グデア頭像」(イラク、紀元前2100年ごろ)や玉(ぎょく)の刃にトルコ石をちりばめた宝器「緑松石象嵌青銅内玉戈」(中国・殷、紀元前13~前11世紀)など、ハイレベルな技術力による逸品が並ぶ。加えて、法隆寺(奈良県斑鳩町)に伝わる「獅子狩文」と同じモチーフの銀皿「鍍金銀帝王狩猟文皿」(伝イラン、7世紀)や正倉院宝物の碗や多曲杯のルーツである「カットガラス碗」(伝イラン・サーサーン朝、5~6世紀)、「鍍金銀八曲長杯」(同、6~7世紀)も展示。教科書でおなじみの古代文明の工芸品、シルクロードによって各地にもたらされた多様な品々、仏像などを通して、世界の文化史をダイナミックな視点で体感できる。




第2章「神々と摩訶不思議な世界」では、ニューギニア、インドネシア、台湾、インド、古代エジプト、アンデスと東から西に周遊するように、各地の信仰と死後の世界に関わる多彩なアイテムを紹介。“男性秘密結社”に入る際に用いる正体不明の儀礼用仮面「マイ」(パプアニューギニア・ニューギニア島、20世紀中頃)、首狩りに成功した勇者の凱旋衣「首狩り勇者の上衣『ルクス・カハ』」、ミイラをくるむときに使われた「ミイラ包み 羽根刺繍マント」(ペルー南海岸・ワリ文化、7~11世紀)などは、現代日本にいる私たちからは遠く思える不思議な品々であるものの、生き抜くための知恵や死者を悼む気持ちといった、人間の普遍的な想念を雄弁に語りかけてくる。





