独自の技法で描く金魚 まるで生きているよう 深堀隆介が誘う金魚繚乱の世界 あべのハルカス美術館 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

独自の技法で描く金魚 まるで生きているよう 深堀隆介が誘う金魚繚乱の世界 あべのハルカス美術館

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 飼っていた金魚の美しさに魅せられ、独自の技法で金魚を描き続ける美術作家・深堀隆介の、初期から最新作を集めた展覧会「深堀隆介展 水面(みなも)のゆらぎの中へ」が、大阪・あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で開かれている。2025年9月7日(日)まで。

『秋敷』2020年
『秋敷』2020年

 深堀は、透明の樹脂にアクリル絵具で何層にも重ねて描く「2.5Dペインティング」とも称される独自の技法で、立体感のある金魚をつくりだす。細部まで丁寧に描かれた金魚たちは、今にも動き出しそうだ。展覧会のタイトルになった「水面」は、境界線を意味するという。水面のゆらぎの中にあるのは虚か現実か、生か死か。命を持たない絵具の積層で、作品を生きているかのように見せる。人と金魚の間の絶対に越えることができない境界線だが、見る人をひきつけ、時に「水の中にいるのでは」という感覚にさせることもある。

『方舟』2009年
『方舟』2009年

 会場には初期の作品から最新作まで約300点が並ぶ。枡の中に樹脂とアクリル絵具を重ねて描いた代表作『金魚酒』シリーズ。初期から2023年までの作品が、「僕の金魚酒ヒストリー」と題し、年表仕立てで、深堀自身の言葉と共に展示されている。その時に何があったのか、どんな風に思ったのか。深堀の飾らない、リアルな姿が見えてくる。時を経るにしたがって、描き方も変化し、「次第に技術が上がってどんどん立体的になっていく変遷を見てもらえます」と深堀は言う。

展示風景:『金魚酒」シリーズを集めた「僕の金魚酒ヒストリー」
展示風景:『金魚酒」シリーズを集めた「僕の金魚酒ヒストリー」
『金魚酒 命名 七葉』2011年 個人蔵
『金魚酒 命名 七葉』2011年 個人蔵

「作品を見た人から『こんな金魚はいない』と言われることがあるそうです。深堀さんが描くのは、品種の設定まである想像の金魚で、実在はしません」とあべのハルカス美術館の新谷式子学芸員は話す。深堀の頭の中には多くの金魚たちが存在し、アトリエは養殖場ならぬ養画場と呼び、そこで作品が生み出される。

『百済』2004年
『百済』2004年

 会場には平面作品も展示されている。金魚だけが描かれているように見えるが、その体、ウロコの下には違うものが描かれることがある。それは深堀自身の心象風景だったりするが、「何が描かれていたのかはわかりません」(新谷学芸員)。ただ、その痕跡が見て取れる作品もある。

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