学生時代、授業で元素を学習した際にカリウムやマグネシウムなど「~ウム」という名がやたら多いと感じた筆者。長年の疑問を解消すべく、理化学研究所の超重元素研究部部長・羽場宏光さんに話を聞きました。

☆☆☆☆
この疑問について羽場さんは「~ウムというのは“金属元素”を表す言葉であるため数が多くなる」と回答。現在確認されている元素は118種類あり、金属元素(カリウム・マグネシウム・アルミニウムなど)と非金属元素に分類されていますが、前者に分類されるものは94種。金属元素の割合はおよそ80パーセントです

「~ウム」というのは金属を意味するラテン語です。中世ヨーロッパで新しい元素が次々と見つかっていったため、慣用的にラテン語の「~ウム」が用いられるようになったのだとか。
ということは新たに元素が発見された場合、発見者が自由に名前をつけられるのでしょうか。これについて羽場さんは「現在、科学者や研究機関が勝手に名付けることはできません。1953年頃にIUPAC (国際純正・応用化学連合)が名前をつけるガイドラインを定めており、世界共通のルールに基づいて命名されています」と話しました。ちなみにガイドラインは2002年と2016年に内容の改訂が行われ、現在は2016年のものが採用されているそうです。
さて、新たな元素の発見を「まだ知られていない数の陽⼦を持った原⼦や原子核を見つける作業」だと羽場さんいいます。原⼦の中にある原⼦核は陽⼦と中性⼦の2種類の粒子からできており、現在118個までの陽子を持った原子が見つかっています。つまり「新発見」とするには、119個以上の陽子を持つ原子を見つける必要があるということです。

「元素の新発見は様々な可能性を広げる」と羽場さん。例えば“治らないと言われてる病気”が、新たな元素によって治るということも起こり得るかもしれないのだとか。そう話した上で、「地球上には、もう新しい元素は存在しないと言われています。今後、“新しい”とするならば、加速器とよばれる大型の実験装置を用いて2種類の原子核をひとつに融合させる必要があります」とも。
☆☆☆☆
元素の名の疑問を解き明かそうとしたら、人類社会の発展に繋がるような話まで聞けました。
(取材・文=堀田将生)





