“重い線、軽やかなタッチ” 日本・シンガポール、障がい者アーティストが訴える パティーナ大阪 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

“重い線、軽やかなタッチ” 日本・シンガポール、障がい者アーティストが訴える パティーナ大阪

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フェーン・ウォンさん

 ウォンさんはシンガポール生まれの女性。廃棄された模造紙を繊細な切り絵に生まれ変わらせる緻密な技術と感性が光る。

 色彩や遊び心があり、鮮やかで直感的なところが洗練さにつながり、その表現力が高く評価され、2023年、シンガポール国内で障がいのあるアーティストの芸術性を称える「UOL (※2)× Art:Dis アート賞(第1回)」でグランプリを受賞。さらに大阪・関西万博のシンガポールパビリオン内のインスタレーションとしても展示されている。

大阪・関西万博 シンガポールパビリオンでもフェーン・ウォンさんの繊細なタッチの切り絵が 繊細な切り絵が

 8月22日、展示会を前に開かれたセレモニーで、シンガポール政府のエリック・チュア氏(文化コミュニティ青年省、社会家族開発省上級政務官)は、「芸術に国境はない。私たちが絵の前で立ち止まって、何を考えるかが大切。線や動きの中に美しさを見出だすことができる。来年(2026年)は、シンガポールと日本の外交関係樹立60年。これからも力強い絆で結ばれることを確信している」と力を込めた。

エリック・チュア氏(文化コミュニティ青年省、社会家族開発省上級政務官)

 展示会ディレクターのジョン・タング氏は、「ウォンさんの切り絵は、ナイフで薄い紙を慎重に切り刻み続ける。ナイフを使い続けると、刃の切れ味が鈍くなる。それでも同じ作業を何度も繰り返し、時間をかけて正確に切ることができる。岡元さんの作品も同じで、じっくりと時間をかけて描かれた作品に重みと繊細さを感じる」と評した。

(左から)山下完和氏、アンジェラ・タン氏、ジョン・タング氏

 やまなみ工房施設長・山下完和(まさと)さんは岡元さんについて、「もともと絵が得意だったわけではない。絵を描き出したのは、やまなみ工房に来て10年目だった」と振り返る。
 精神的に不安定な日々が続いていたという。毎日怒ったり泣いたり…その繰り返しだった。「私たちにとっての“当たり前の生活”が彼(岡元さん)に混乱を招いていた」とも話した。

 岡元さんは絵を描きたかったわけではない。やまなみ工房自体が絵を指導する場ではないが、どうすれば岡元さんが穏やかな生活を送ることができるか考えていたという。そこでたどり着いたのが創作の現場だった。独りぼっちの部屋で、大好きな「アンパンマン」の歌を聴きながら過ごしていると、たまたまそこにあった割り箸をつかんで絵を描き始めた。それから20年が過ぎた。山下さんは「私にとって、世界一行儀の悪いアーティストだ」と笑顔を見せる。しかし、社会からの評価を目的にしているのではなく、自分のペースで描き続ける姿に尊敬の念を感じている。

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